トム・ウェイツ/土曜日の夜(1974)

The Heart of Saturday Night [12 inch Analog]

【夜のロック】
Tom Waits – (Looking For) The Heart Of Saturday Night

トム・ウェイツの2ndアルバム『土曜日の夜(The Heart of Saturday Night)』のタイトル曲。ジャズ・ミュージシャンたちを起用し、よりジャズ色の強いアルバムとなった。

土曜の夜に恋の相手を探して、一緒にドライヴすることを夢想しながら夜の街に車を走らせる、孤独な男の歌だ。
若い頃のトム自身のことを歌ったのかもしれないし、もしかすると若い頃のわたしのことを歌っているのかもしれない。

トム・ウェイツは母子家庭で育ち、高校中退して16歳からピザ屋で働いた。なんだかわたしと同じような少年時代を過ごしているので、親近感が湧く。その後は全然違うけれども。

トムがいつも歌うのは、夜の街で働いていたり、なけなしの金とささやかな幸福だけで細々と生き、持て余すほどの苦悩や哀しみをなにかで紛らわしながら、なにになれることもなく生涯を終えるだろう、市井の人々だ。わたしのような。

若くて、滾る欲動をなんとか宥めながら、少し前かがみになって、夜の街をさまよったのも、遥か遠い昔のことだ。

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