エディ・コクラン『ザ・ベスト・オブ・エディ・コクラン』(1985)【最強ロック名盤500】#69

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【最強ロック名盤500】#69
Eddie Cochran
“The Best of Eddie Cochran” (1987)

エディ・コクランも、もう60年以上も前の音楽なのだ。
今の若い人たちが聴いたらどんなふうに聴こえるのだろう。
わたしが聴くのとは全然違って聴こえるのだろうか。わたしはこの音楽にリアリティを感じるけれども、若者たちにはもはや感じられないのだろうか。
わたしにとって戦前のブルースがそうであるように、あまりに古すぎてその魅力がよくわからない「大昔の音楽」にやはり聴こえるのだろうか。

エディ・コクランは生前にオリジナル・アルバムは、1957年発表の『シンギン・トゥ・マイ・ベイビー』1枚しか残していない。このアルバムには彼の代表曲は「バルコニーに座って」ぐらいしか入っていないので、ここは迷わずベスト盤を選ぼう。

本作は1987年にEMIからCDの形態でリリースされたエディ・コクランのベスト・アルバムである。若い頃のわたしが買ったやつだ。
最近のベスト盤は「Very Best」などと謳いながら30曲ぐらい入っていたり、もしくは2枚組で50曲ぐらい収録してあったりするのだけど、わたしは15曲入りの本作ぐらいがちょうどいい感じで楽しめる。たくさん入っていればいいってものではないのだ。カッコ内はシングルチャートの最高順位だ。

【収録曲】

 1 C’mon Everybody (米35位、英6位)
 2 Twenty Flight Rock
 3 Three Steps to Heaven (米108位、英1位)
 4 Summertime Blues (米8位、英18位)
 5 Drive-In Show (82位)
 6 Nervous Breakdown
 7 Jeannie, Jeannie, Jeannie (米94位、英31位)
 8 Weekend (英15位)
 9 Somethin’ Else (米58位、英22位)
10 Skinny Jim
11 Pink Peg Slacks
12 Cut Across Shorty
13 Sittin’ in the Balcony (18位)
14 Hallelujah, I Love Her So
15 My Way (英23位)

ぶっちゃけ、有名曲は全部入ってるし、これ1枚で充分だとわたしは感じる。ジャケもカッコいいし。「カモン・エヴリバディ」から始まるのがまたいい。現在ではサブスク化もされていないようだしCDも入手困難だろうけれども、入門用にベスト盤を聴くとしたら最低でも本盤トラックの1、2、4、7、9の5曲は入っているものを聴いてみることをお薦めする。

それにしても良い音で鳴っている。
モノラルだけど、楽器の音がくっきりとして、本物の楽器の音らしい瑞々しく立体的な音だ。シンプルで、大胆で、まったく新しい音楽であった当時の鮮度は、今のわたしでも感じることができる。

わたしはその昔パンクにハマって、そこから遡る形でエディ・コクランを聴いたのだけど、初めて聴いたときもなんてクールでカッコいいんだろう、と感心したものだった。

今聴いてもやっぱり同じことを思う。

ロックンロールなんてあんまりひねくり回してもどんどんつまらなくなっていくだけだ。
そういうあの手この手でひねくり回した音楽をたくさんたくさん聴いて汚れっちまったわたしの耳には、こういうシンプルで小ざっぱりとした音楽が今さらながら新鮮に響く。汚耳と心が洗われるようだ。

エディ・コクランは実は本国アメリカでは「サマータイム・ブルース」だけで消えた一発屋みたいな扱いになっていたが、イギリスでは人気が高まる一方だった。そして、その生涯の最後も演奏旅行中だったイギリスで迎えた。

1960年4月16日、3ヶ月に及んだイギリスでの演奏旅行を疲労困憊で終え、待望の帰国の日だった。
エディ・コクランと彼の恋人でソングライターのシャロン・シーリー、マネージャーのパトリック・トンプキンズ、一そして緒にツアーを回ったジーン・ヴィンセントの4名を乗せたタクシーは、翌日13時の飛行機に間に合わせるため、23時に出発した。ヒースロー空港まで160kmの道のりを、19歳のタクシー運転手は、およそ110kmのスピードで疾走した。

そして深夜0時頃、緩やかなカーブを走行中にタクシーはコントロールを失って街路灯に激突し、コクランはガラスを突き破って車外に投げ出された。運転手とマネージャーは無事、シャロンは軽傷、ジーンは鎖骨を折る重傷だった。そしてエディ・コクランは翌17日16時10分、搬送先の病院で死亡が確認された。

イギリスでは各紙が一面で報道した。そして死後にリリースされたシングル「スリー・ステップス・トゥ・ヘヴン」は全英シングルチャートの1位を獲得した。しかし本国アメリカでは地方紙が少しだけ報じた程度で、「スリー・ステップス・トゥ・ヘヴン」も108位と、寂しい結果となった。

エディ・コクランは21歳でこの世を去った。前年にバディ・ホリーが22歳、リッチー・ヴァレンスが17歳で世を去っているが、この頃からロックンロールは呪われてるとしか思えない節がある。

エディ・コクランの実働期間はたったの3年ぐらいだったが、彼もまたわれわれの心に残る音楽を遺し、その名を永久に遺した。


↓ 全米35位、全英6位のヒットとなった代表曲「カモン・エヴリバディ」。

↓ 全米58位、全英22位のシングル「サムシング・エルス」も人気の高い代表曲だ。

➡︎ エディ・コクラン「サマータイム・ブルース」の記事はこちら

(Goro)

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