パティ・スミス/フリー・マネー(1975)

HORSES [12 inch Analog]

【NYパンクの快楽】
Patti Smith – Free Money

音楽や詩を愛し、ランボーやボブ・ディランのような詩人の恋人になりたくて、十代の頃にニュー・ジャージーからニューヨークの街へと移り住んだパティ・スミスは、自ら詩を書き、朗読などの表現活動をするうち、バンドを組んで歌うようにもなる。

そして29歳でアルバム『ホーセス(Horses)』でデビューする。
その型破りのヴォーカル・スタイルと激しいパフォーマンスによって彼女は最初期のパンク・ロッカーとなり、後に「パンクの女王」と評されるようになる。
このアルバムを発火点として、70年代パンク・ムーヴメントはまずニューヨークから始まった。

この曲はそのデビュー・アルバムに収録された、「グロリア」と並ぶアルバムのハイライトであり、「盗んだお金であなたにジェット機を買ってあげたい」と歌う歌だ。パティ・スミスとバンドのギタリストだったレニー・ケイによって書かれている。

いまあらためて聴いてみると、パンクというよりむしろ、同じくニュー・ジャージー州で育ったブルース・スプリングスティーンとの共通性を想起させる。

当時のスプリングスティーンの歌詞にもよく出てくる「一生なににもなれそうにもない閉塞した町から飛び出して、自分の人生を切り拓く」を地で行ったのがまさにパティ・スミスのようでもある。この曲のドラマチックな展開、情熱的で切実な歌と響きもまた「明日なき暴走」や「涙のサンダーロード」を想い出させる。

アルバム・ジャケットを撮影したのはパティ・スミスのルームメイトだった写真家のロバート・メイプルソープだ。ただし恋人ではない。彼は同性愛者だった。

わたしはこのアートワークは、ロック史上のアルバム・ジャケットでも十指に数えられる最高傑作のひとつだと思う。

しかし残念ながらわたしはこれをCDでしか持っていない。
いつかレコードで欲しいものだとずっと思っている。

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