ザ・ポリス/ソー・ロンリー(1978)

Outlandos D'Amour [Analog]

【70年代ロックの快楽】
The Police – So Lonely

ポリスの1stアルバム『アウトランドス・ダムール(Outlandos d’Amour)』収録曲。

「パンクのような3コードの単純すぎる音楽をやるのは嫌だったけど、レゲエは音楽的に洗練されてるし、パンク陣営にも受け入れられてるので、パンクとレゲエを融合させてみることにした」とスティングが語るように、その当初からポリスの音楽スタイルは、戦略的な意図を持って練り上げられたものだったのだろう。この曲もそんなレゲエとパンクを融合させて彼らが創り上げた、独特のスタイルによる見事な出来栄えという他ない名曲だ。

なにしろ、小学校の国語教師やジャズ・ベーシストという経歴を持ち、驚異的なヴォーカリストであり天才的なソングライターでもあるスティングと、元ジャズ・ギタリストで、アニマルズやソフトマシーンなどを渡り歩いたアンディ・サマーズ、元プログレ・バンドのドラマーで父親はミュージシャンでありながらCIAの設立メンバーでもあったスチュワート・コープランドという、高度な技術と幅広い音楽性と高い教養と特殊な家柄を持つ3人によって作り出された斬新な音楽は、それまでイギリスを席巻していた「貧乏でバカなクソガキだってロックバンドならやれるぜ」的なパンク・ムーヴメントの幻想が一瞬で色褪せてしまうほど、オリジナリティにあふれ、人々の耳目を惹くものだった。

やっぱり情熱と勢いとワン・アイデアだけでは、天才と技術を兼ね備えた音楽家集団には敵わないものなのか。それはなんだか悔しい気もするけれど、この世に厳然と聳える真実でもあるのだろう。

しかしポリスは、天才と技術を兼ね備えた音楽家集団でありながら、当時流行のパンク・バンドのふりをして見せるという狡猾な手法で世に現れた。
まあこれはレコード会社の戦略なのだろうけれども。
この1stアルバムのジャケットも、レコード店の「パンク」の棚に入れられる気満々のデザインだし、とりあえず1曲目の「ネクスト・トゥ・ユー」を試聴すれば、パンクスはほぼ全員買って帰るに違いない。

でも家に帰ってあらためてレコード・プレーヤーに乗せて見ると、この2曲目の「ソー・ロンリー」でなんだか様子が違うことに気づくだろう。気に入るかどうか、そこから先は人によるだろうけど、なにか新しい時代が始まったことには誰もが気づいたに違いない。

まさにパンクの時代を終わらせ、ニュー・ウェイヴの時代の始まりを告げた、当時の英国ロック・シーンを激震させたアルバムと言っても過言ではないだろう。

PVは日本と香港でゲリラ的に撮影された映像が使用されている。

途中のアンディ・サマーズのギター・ソロ、あらためて変態だなと感心する。

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