ビッグ・スター/キッザ・ミー(1975)

Big Star Third

【70年代ロックの快楽】
Big Star – Kizza Me

1stアルバムも2ndアルバムも、あまりの売れなさにメンバーが次々と去り、ビッグ・スターはついにアレックス・チルトンとドラムのジョディ・スティーヴンスの2人だけになってしまった。

そして1975年に録音した3rdアルバム『サード/シスター・ラヴァーズ(Third/Sister Lovers)』は、プロモーション用に250枚がプレスされたものの、どこのレコード会社からも相手にされず、そのままお蔵入りとなってしまう。

信じられない話だ。こんな素晴らしい名盤に誰も飛びつかなかったなんて。

しかし海賊版が出回り、後にイギリスで再評価され始めると、1982年にやっと公式にリリースされた。

その後何度か再発され、そのたびに曲順が変わっていたりする変なアルバムだが、わたしの持っていたCDではこの曲が1曲目だった。

わたしはソニック・ユースのサーストン・ムーアが選んだ〈最も影響を受けた10枚のレコード〉という雑誌の記事の中にこのアルバムが選ばれていたことでビッグ・スターのことを知り、輸入盤ショップを探しまわって購入したのだった。

1stや2ndと比べると精神状態も体調も良くなかったらしいチルトンだが、ヘロヘロなのだけれどどこか惹きつけられる魅力のある声や、耳に残るメロディ、不釣り合いにラウドなギターとピアノがバトルしてるみたいな不協和なサウンドに、わたしはシビれた。
ブリティッシュ・ビートに影響を受けたパワー・ポップではあるけれども、すでに商業的な成功はあきらめ、やりたいことをやった実験的な要素も強いのがこのアルバムの特徴だった。

オープニングのこの曲を聴いた瞬間に「こりゃとんでもないアルバムだぞ!」と、わたしは確信したものだった。

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