【ディランのアルバム全部聴いてみた】『ブロンド・オン・ブロンド』(1966)

Blonde on Blonde (Reis)

【ディランのアルバム全部聴いてみた 7枚目】
“Blond On Blond”

前作『追憶のハイウェイ61』のジャケットは天下を獲った殿様みたいな顔だったけど、今回のジャケはもう、すべてを見通す孤高の賢者みたいな顔だ。最高傑作の誕生にも「然り」としか言わないような。

ディランの最高傑作として挙げられることが多いアルバムだ。そして、ロック史上初めての、2枚組LPという形で発売された大作アルバムでもある。

たしかに、前2作も凄い傑作だけれども、まだこの世に生まれたばかりの「フォーク・ロック」というサウンドを試行錯誤している感はある。

しかしこのナッシュヴィル録音のアルバムでは、ディランが理想としていたサウンドがついに実現できたと本人も言い、「音が黄金に輝いている」と語っている。だから「ブロンド・オン・ブロンド」なのだろう。そう言われるとそんな気がしてくるから不思議なものだ。

当時はナッシュヴィルのミュージシャンにとって、ニューヨークから来たアーティストなんて異文化の異国人にも等しいぐらいのものだったらしいのだけれど、その異文化同士が見事に融合して新しい音楽が生まれたのだ。

完成度が高く、聴きやすいサウンドなので、ディランを初めて聴く人にも薦めやすいアルバムだと思っていたけれども、よく考えてみると1曲目が「雨の日の女」というのもなかなかハードルが高いかもしれない。ちなみにこの曲は当時、「わけがわからない歌詞で、気違いじみている」という理由で、放送禁止となった。ただのユーモラスな歌なので、そんな大層なものじゃないと思うのだけど。

ディランの代表曲のひとつ、「女の如く」は、万人に薦められる名曲だ。他にも「アイ・ウォント・ユー」「メンフィス・ブルース・アゲイン」「スーナー・オア・レイター」など、親しみやすい名曲が多いのが特長だ。

フォーク・ロックは、ここで一旦完成を見たと言っていい。

前作のようなグイグイ来る「圧」もないし、ずっと何時間も聴いていられる。音にもメロディにも、暖かさを感じる。

25歳でこんな素晴らしいアルバムを作るって、どんな気分なんだろう。

↓ 「女の如く(Just Like a Woman)」

↓ 「スーナー・オア・レイター(One of Us Must Know (Sooner or Later))」

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする