【天国へ行った地獄のロックライダー】ミート・ローフ/ロックンロール・パラダイス(1977)

Bat Out of Hell

【70年代ロックの快楽】
Meat Loaf – Paradise By The Dashboard Light

テキサス出身の重量級歌手、ミート・ローフが1977年に発表した大ヒットアルバム『地獄のロックライダー(Bat Out Of Hell)』のハイライトとも言える、彼の代表曲だ。

基本的にミート・ローフの曲を書いているのは彼の相棒である天才ソングライター、ジム・ステインマンだ。最初にそれを知ったとき、ヤツはあのツラで曲も書かずに歌うだけなのだということにまず驚かされたものだった。

プロデュースはトッド・ラングレン、バックバンドはユートピアとブルース・スプリングスティーンのE・ストリート・バンドが合体した、豪華な布陣だ。

ミート・ローフの音楽はロック・オペラと呼ばれている。それはもうドラマチックで、ド派手で、大袈裟で、ゴージャスで、悪趣味を超えた極悪趣味である。

ただの悪趣味なら聴く価値もないが、突き抜けた極悪趣味ともなれば一聴の価値はある。ここまでやればもう、カッコいいという他ない。ロックンロールなんて、極悪であればあるほどいいに決まってるのだ。

そのうえ熱量がまた凄い。熱量だけならちょうど同じ時期にデビューした、セックス・ピストルズさえも凌ぐほどだ。熱い。とにかく熱い。地獄の燃え盛る炎のように熱い。

この曲もまた、カー・セックスの情景を男女のデュエットで歌った極悪趣味の歌である。
17歳の少年と少女が車の中でいちゃつき始めると、カー・ラジオの野球中継がその行為にシンクロして盛り上がってくる。
そして少年がいざ突撃しようとすると、女子が「本当にわたしを愛してる!? 永遠に愛してくれる!? わたしと結婚して幸せにしてくれる!?」と叫び、少年がドン引きして萎えてしまう、という涙なしには聴けない歌だ。

この尋常じゃないPVでは、美女と狂った獣がデュエットしながらこれを実演しているので、ぜひ目を背けないでこの狂態を目撃して欲しい。

この極悪趣味の激熱アルバムは4,300万枚を売り上げるメガヒットとなった。
史上5番目に売れたアルバムらしいが、そのわりには日本ではさほど有名ではない。rockin’onが選んだ『BEST 500 DISC』にも入っていない。
これはまだまだ日本人が、真のロックを理解できていない証拠なのかもしれない。

そんなミート・ローフも一昨日、ついにこの世を去ってしまった。74歳だった。
きっと神様が「地獄のロックライダーよ、天国へようこそ」と迎えたに違いない。

アーティストは、肉体は滅んでも、残した音楽は永遠だ。
今日もわたしをはじめ、世界中の人々が彼の音楽を聴いているのを空の上から眺めて、満足げに微笑んでいるに違いない。

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