ボブ・ディラン・カバー・ソング【ベスト20】The 20 Greatest BOB DYLAN Covers

Bob Dylan (Mini Lp Sleeve)

およそ4カ月に渡って、ボブ・ディラン関連の記事を中心に書いてきたけれども、これで一応最後です。

最後は、たぶんロック・アーティスト史上最も多くその作品がカバーされてきたと思われるボブ・ディランの、数えきれないほどあるカバー・ソングの中から、わたしが選んだ名カバー、ベスト20を紹介したいと思います。

第20位 トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ/雨の日の女(1993)
Tom Petty & The Heartbreakers – Rainy Day Women #12 & 35

1993年にNYマディソン・スクエア・ガーデンで行われた、ボブ・ディランのデビュー30周年記念ライブを記録したアルバム『30〜トリビュート・コンサート』収録曲。このカバーを聴いて、この曲ってこんなカッコいい曲だったんだなと初めて思った。ディランと共にツアーをしたこともあるバンドだからこその、曲を手中にしたのびのびとした演奏だ。

第19位 ゼム/イッツ・オール・オーヴァー・ナウ、ベイビー・ブルー(1966)
Them – It’s All Over Now, Baby Blue

ヴァン・モリソンが在籍したアイルランドのバンド、ゼムが1966年に発表した2ndアルバム『ゼム・アゲイン(Them Again)』に収録されたカバー。R&B風の緊張感のあるアレンジが美しい。当時21歳の天才、ヴァン・モリソンのヴォーカルはさすが。原曲は65年作『ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム』収録。

第18位 ブライアン・フェリー/はげしい雨が降る(1973)
Bryan Ferry – A Hard Rain’s a-Gonna Fall

ロキシー・ミュージックのヴォーカリストとして知られるブライアン・フェリーが、ロキシー全盛期にリリースした全曲カバーの1stソロ・アルバム『愚かなり、わが恋(These Foolish Things)』のオープニング・トラック。いかにもロキシー=フェリーらしい軽快でポップなアレンジで、原曲のシリアスさは微塵もなくなっている。でもこれはこれで面白いし、彼ならではのアグレッシヴなスタイルだろう。

第17位 ジョージ・ハリスン/イフ・ノット・フォー・ユー(1970)
George Harrison – If Not For You

1970年4月にジョージ・ハリスンとディランがニューヨークで12時間に及ぶセッションを行った際に録音された曲。そのときの音源は使われなかったが、半年後にディランは『新しい夜明け』で、ジョージは『オール・シングス・パスト・マス』で、それぞれ新たに録音し直して収録している。ジョージのスライド・ギターが印象的だ。

「ジョージ・ハリスン/イフ・ノット・フォー・ユー」の過去記事はこちら

第16位 パティ・スミス/チェンジング・オブ・ザ・ガーズ(2007)
Patti Smith – Changing of the Guards

パティ・スミスが2007年に発表したカバー・アルバム『トゥエルヴ(Twelve)』に収録したカバー。原曲は78年の『ストリート・リーガル』収録曲だが、ディランの中からこの曲を選ぶなんて、さすがパティ、なんて思ったものだ。わたしが偏愛する曲なのだ。

「パティ・スミス/チェンジング・オブ・ザ・ガーズ」の過去記事はこちら

第15位 ザ・バーズ/ゴーイング・ノーホエア(1968)
The Byrds – You Ain’t Goin’ Nowhere

ザ・バーズにグラム・パーソンズが加入して制作された、当時は画期的な試みとなったカントリーとロックを融合させた歴史的名盤『ロデオの恋人(Sweetheart Of The Rodeo)』のオープニング・トラック。原曲は66~67年の隠遁期にディランが書き、ザ・バンドと共にビッグ・ピンクで録音したもののひとつだった。

第14位 レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン/マギーズ・ファーム(2000)
Rage Against the Machine – Maggie’s Farm

レイジの4作目にして最後のアルバム『レネゲイズ(Renegades)』収録曲。彼ららしいゴリッゴリのハードなサウンドとアジテーションのようなヴォーカルが流石のカッコいい出来だ。
原曲はこれも65年作『ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム』収録。

「レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン/マギーズ・ファーム」の過去記事はこちら

第13位 ザ・ローリング・ストーンズ/ライク・ア・ローリング・ストーン(1995)
The Rolling Stones – Like a Rolling Stone

ローリング・ストーンズがライク・ア・ローリング・ストーンをカバーするという、ダジャレ的な選曲だが、これがなかなか良い出来だ。この曲でこんなに正攻法のアレンジで成功しているカバーは意外と無いものだ。ミック・ジャガーのヴォーカルもこの曲によく合っている。

「ボブ・ディラン/ライク・ア・ローリング・ストーン」の過去記事はこちら

第12位 ブルース・スプリングスティーン/自由の鐘(1988)
Bruce Springsteen – Chimes of Freedom

スプリングスティーンの1988年の欧州ツアーで披露されたカバーだ。ライヴでのカバーと言ってもさすがはボス、しっかり練られたドラマチックなアレンジで、完璧な歌唱も含めて完全に自分のものにしている。原曲は64年の『アナザー・サイド・オブ・ボブ・ディラン』に収録。

「ブルース・スプリングスティーン/自由の鐘」の過去記事はこちら

第11位 ザ・バンド/傑作をかく時(1971)
The Band – When I Paint My Masterpiece

ザ・バンドの4thアルバム『カフーツ(Cahoots)』収録曲。原曲はレオン・ラッセルのプロデュースでディランが録音したシングル「川の流れを見つめて」と共に録音されたが、ザ・バンドが先に公式にアルバムに収録することになった。ノスタルジックな響きと空気感が良い雰囲気だが、演奏はシャープで現代的だ。

第10位 プリテンダーズ/いつまでも若く(1994)
Pretenders – Forever Young

プリテンダーズのヴォーカリスト、クリッシー・ハインドも、昨年全曲ディランのカヴァーでアルバムを出したほどの筋金入りのディラン党だ。
このカバーは1994年にプリテンダーズが発表した6thアルバム『ラスト・オブ・インディペンデンツ(Last Of The Independents)』に収録されている。彼女の声の素晴らしさと相まって、感動的な仕上がりだ。

「プリテンダーズ/フォーエヴァー・ヤング」の過去記事はこちら

第9位 アデル/メイク・ユー・フィール・マイ・ラヴ(2008)
Adele – Make You Feel My Love

19歳で衝撃のデビューを果たしたアデルが、1stアルバム『19』に収録した唯一のカバー曲。19歳とはとても信じられないほど熟成した声と豊かな表現力に圧倒される。
原曲はディランが1997年にリリースした『タイム・アウト・オブ・マインド』に収録されている。

「アデル/メイク・ユー・フィール・マイ・ラヴ」の過去記事はこちら

第8位 ドリー・パートン/くよくよするなよ(2014)
Dolly Parton – Don’t Think Twice

瑞々しい可憐な歌声が素晴らしいが、信じがたいことにドリー・パートンはこのとき68歳なのだ。カントリー風のクラシックなアレンジも絶妙でチャーミングなカバーだ。多くのカバーがある曲だけれども、圧倒的な美しさ、楽しさ、完成度の高さだ。

「ドリー・パートン/くよくよするなよ」の過去記事はこちら

第7位 ザ・バーズ/自由の鐘(1965)
The Byrds – Chimes of Freedom

バーズの名盤1st『ミスター・タンブリンマン(Mr. Tambourine Man)』収録曲。これもまさに、バーズのバージョンを聴いて「この曲、こんな良い曲だったんか!」と気づいた曲だった。ディランの一見地味な原曲の、実はポップでメロディアスな要素を引き出した完璧なアレンジだ。原曲は64年の『アナザー・サイド・オブ・ボブ・ディラン』に収録。

第6位 ミック・ロンソン ft.デヴィッド・ボウイ/ライク・ア・ローリング・ストーン(1994)
Mick Ronson ft. David Bowie – Like a Rolling Stone

ミック・ロンソンの死後にリリースされた遺作、『ヘヴン・アンド・ハル(Heaven And Hull)』収録曲で、ヴォーカルは盟友デヴッィド・ボウイだ。メタリックな輝かしい質感で縦横無尽に暴れ回るギターと、気合の入った疾走感あふれるパワフルなヴォーカルが最高にカッコいい。

「ミック・ロンソン ft.デヴィッド・ボウイ/ライク・ア・ローリング・ストーン」の過去記事はこちら

第5位 ジョニー・キャッシュ/悲しきベイブ(1965)
Johnny Cash – It Aint Me Babe

オシドリ夫婦のジョニーとジューンがデュエットでカバーした曲だ。ディランらしい意地クソ悪い言い方で彼女に別れを告げる実にいやらしい歌詞を、シニカルで微笑ましいラブソングに変換している。アレンジも素晴らしい。原曲は64年の『アナザー・サイド・オブ・ボブ・ディラン』に収録。

「ジョニー・キャッシュ/悲しきベイブ」の過去記事はこちら

第4位 ザ・バンド/アイ・シャル・ビー・リリースト(1968)
The Band – I Shall Be Released

ザ・バンドの名盤1st『ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク(Music from Big Pink)』収録。ディランがザ・バンドに提供した曲でありながら、ディランの曲の中でも最も有名な曲のひとつとなった。哀切なファルセットの歌声が心を揺さぶる。日本でも昔から凄く人気のある曲で、日本語によるカバーも多い。

「ザ・バンド/アイ・シャル・ビー・リリースト」の過去記事はこちら

「RCサクセション/アイ・シャル・ビー・リリースト」の過去記事はこちら

第3位 ザ・バーズ/マイ・バック・ページズ(1967)
The Byrds – My Back Pages

バーズの4thアルバム『昨日よりも若く(Younger Than Yesterday)』収録のカバー。これこそまさにディラン・カバーあるあるの「これってこんないい曲だったんか!」の大賞を授けたくなるほどの素晴らしい出来。バーズのカバーが無ければこの曲がこれほど有名になることもなかっただろう。原曲は64年の『アナザー・サイド・オブ・ボブ・ディラン』に収録。このアルバムはまさにカバーの元ネタの宝庫だな。

「ザ・バーズ/マイ・バック・ページズ」の過去記事はこちら

第2位 ジミ・ヘンドリックス/ウォッチタワー(1968)
Jimi Hendrix – All Along the Watchtower

ジミヘンの名盤3rd『エレクトリック・レディランド(Electric Ladyland)』収録のカバー。ディランもこのカバーを絶賛し、「この曲の権利の半分ぐらいはヘンドリックスのもの。あれが完成版だ」と語ったという。この曲をカバーするアーティストはだいたいジミヘンのバージョンを手本にしているし、ディラン自身すらそうだ。原曲もカッコいいけどな。

「ジミ・ヘンドリックス/ウォッチタワー」の過去記事はこちら

第1位 ザ・バーズ/ミスター・タンブリンマン(1995)
The Byrds – Mr. Tambourine Man

このカバーを初めて聴いたときは鳥肌が立つほどシビれた。アコースティック風の繊細で美しいバンド・サウンドに、心を捉えて離さないロジャー・マッギンの声、そして素晴らしいコーラス・ワーク。この1曲を聴いただけで、わたしはバーズに夢中になったものだった。
そしてこの曲の誕生はフォーク・ロックの誕生でもあり、アメリカン・ロックの原点とも言える、ロック史における最重要曲のひとつでもある。

「ザ・バーズ/ミスター・タンブリンマン」の過去記事はこちら

以上、ディラン・ソングの名カバー、ベスト20でした。

ちょっとバーズ多めになったけれども、やっぱりディランのカバーと言えばバーズが先駆者なので、それも当然だろう。

ここで選んだカバーの多くは「原曲超え」を果たしているけれども、これもやっぱり素材が良いからできることであって、あらためてこれだけの名曲を1人の人間が書いたと思うと、その天才的な才能に圧倒される想いだ。

そしてまだまだわたしが耳にしたことのないディランのカバーもいくらでもあるだろうから、またいつか、凄いのを見つけたら紹介していきたい。

選んだ20曲がぶっ続けで聴けるYouTubeプレイリストを作成しましたので、ご利用ください。

♪YouTubeプレイリスト⇒ボブ・ディラン・カバー・ソング【ベスト20】はこちら

また、apple musicのプレイリストとしても作成済みです。
apple musicをご利用の方はこちらのリンクからプレイリストにジャンプできます。

ボブ・ディラン・カバー・ソング【ベスト20】The 20 Greatest BOB DYLAN Covers (goromusic.com)

ぜひお楽しみください。
(by goro)