ヒストリー・オブ・ロック 1972【新たなヒーローたちの登場】Greatest 10 Songs

The Rise & Fall of Ziggy Stard [12 inch Analog]

1972

連合赤軍による浅間山荘事件、日本赤軍によるテルアビブ空港乱射事件、ミュンヘンオリンピック開催中のパレスチナゲリラによるイスラエル選手団殺戮など血なまぐさいテロリズムが立て続けに起こっているのも知らずに、少年のわたしがその年発売された初代の仮面ライダースナックのカードを集めるのに夢中になっていた1972年は、グラム・ロックが大流行した年だった。

60年代に活躍したロック・アーティストたちもそろそろアラサーとなり、リスナーも同様に年齢を重ねていると、ロックもいつの間にか「大人用」の音楽となり、プログレやアート・ロックや超絶技巧で長い長いインプロビゼーションを聴かせるハード・ロックなどがもてはやされたが、しかしそれは新しいリスナーの十代の少年少女たちには難しすぎたり、複雑すぎたり、クソつまらなかったりしたにちがいない。

そんな新世代のリスナーが飛びついたのがグラム・ロックだった。見た目にもカッコ良くて、音楽もわかりやすかったのだ。
グラム・ロックに括られるアーティストの中で本物と言えるのは実際はデヴィッド・ボウイだけと言えなくもないけれども、しかし残りのフェイクみたいな連中は、そのフェイクという安っぽさやいかがわしさがまた魅力だったりもするのだ。

グラム・ロックの流行は2年ほどであっという間に沈静したが、それらに無中になった少年たちが、後に今度はパンク・ロックという爆弾を引っ提げて大人用のロックシーンを吹き飛ばしにかかるのである。

そしてアメリカでは西海岸から、「気楽に行こうぜ」という新たな時代を象徴するようなメッセージと共に新しい風が吹き始めた。

以下はそんな、ロックが新たなリスナーを獲得した1972年を象徴する名曲10選です。

デヴィッド・ボウイ/ジギー・スターダスト
David Bowie – Ziggy Stardust

The Rise & Fall of Ziggy Stard [12 inch Analog]

グラム・ロックの金字塔、名盤『ジギー・スターダスト』のタイトル曲。まさに宇宙からやってきたかのような衝撃的な降臨で、ジギー・スターダスト=デヴィッド・ボウイは新しい世代のロック・ヒーローとなった。

『ジギー・スターダスト』の過去記事はこちら

Tレックス/テレグラム・サム
T. Rex – Telegram Sam

The Slider [12 inch Analog]

グラム・ロック界のスーパー・アイドルと言えるのがこのT.レックスのマーク・ボランだ。
彼はギターも歌もちっともうまくはないけれども、それでもこんなにカッコいい音楽ができるんだということを少年少女たちに身をもって教えた最初のロックスターだった。
この曲は名盤『ザ・スライダー』収録の、全英1位となった大ヒット曲だ。

「テレグラム・サム」の過去記事はこちら

モット・ザ・フープル/すべての若き野郎ども
Mott The Hoople – All The Young Dudes

All the Young Dudes

69年にデビューしたもののあまりに売れず、解散しようとしていたところをデヴィッド・ボウイがプロデュースを買って出て、この曲を提供し、全英3位のヒットとなった。
「TVに出てる大人たちはおれたち若者を悪く言うけど、おれがTVを見るのはT.レックスを見るためさ」という素敵な歌詞がある。

「すべての若き野郎ども」の過去記事はこちら

ロキシー・ミュージック/ヴァージニア・プレイン
Roxy Music – Virginia Plain

ROXY MUSIC-REMASTERED

独特のダンディズムとクセが強いヴォーカルのブライアン・フェリーと、電子楽器エンジニアの鬼才ブライアン・イーノという強烈な個性のぶつかり合いで、斬新なサウンドと絶妙な壊れ具合の新しいロックを創造したロキシー・ミュージックのデビュー・シングル。日本のYMOも彼らに大きな影響を受けている。

「ヴァージニア・プレイン」の過去記事はこちら

ディープ・パープル/スモーク・オン・ザ・ウォーター
Deep Purple – Smoke on the Walter

Machine Head

この年、日本武道館で来日公演を行うなど、日本ではレッド・ツェッペリンと並んでブリティッシュ・ハード・ロックの二大巨頭だったディープ・パープル。
この曲は彼らの代表作『マシン・ヘッド』に収録され、全米4位の大ヒットとなった代表曲だ。有名なイントロとゴリゴリとした質感のサウンドが印象的だ。

「スモーク・オン・ザ・ウォーター」の過去記事はこちら

アリス・クーパー/スクールズ・アウト
Alice Cooper – School’s Out

SCHOOL'S OUT

アリス・クーパーの音楽はちょうどグラム・ロックとハード・ロックを併せたようであり、その悪と恐怖の権化のようなホラー・キャラクターは元祖メタル・ヒーローとも言える。イギリスではボウイやT.レックスが少年たちの新たなロックヒーローとなったが、アメリカではこのアリス・クーパーがその役を担ったと言えるだろう。
「学校が爆破されて木っ端みじん、永遠に夏休みだ!やったぜ」と歌うこの曲は、全米7位まで上がるヒットを記録した。

「スクールズ・アウト」の過去記事はこちら

ルー・リード/ワイルド・サイドを歩け
Lou Reed – Walk on the wild side

TRANSFORMER [12 inch Analog]

「おネエでもおナベでも、売春婦でもヤリマンでも、マトモな生き方でなくても、なんだっていいじゃないか。ヤバい道を歩いて生きていくのも悪くない」と歌う、ロック史に燦然と輝く名曲だ。ウソっぽいところが少しもない、真に優しさにあふれた、自由を感じる美しい歌だ。
名盤『トランスフォーマー』からのシングルで、全米16位、全英10位となった、彼にとって最大のヒットとなった代表曲。

「ワイルド・サイドを歩け」の過去記事はこちら

カーリー・サイモン/うつろな愛
Carly Simon – You’re So Vain

No Secrets [Analog]

ニューヨーク出身のシンガー・ソングライター、カーリー・サイモンの代表曲。全米1位、全英3位の大ヒット・シングルだ。
多くの有名人たちと浮名を流した彼女だったが、自分を捨てたモテ男に対する攻撃的でリアルな歌詞は、いったい誰のことなのかと話題にもなった。バック・コーラスにはこれも元カレとの噂がある、ミック・ジャガーが参加している。

「うつろな愛」の過去記事はこちら

イーグルス/テイク・イット・イージー
Eagles – Take It Easy

イーグルス・ファースト

60年代にフォーク・ロックやサイケデリック・ロック、カントリー・ロックなど次々と新しい音楽を生み出した米西海岸、ウエストコースト・ロックの次の主役がこのイーグルスだった。
カントリー・ロックの進化形のような爽快なサウンドと共に「気楽に行こうぜ」と歌って大ヒットした彼らのこのデビュー・シングルは、どこかその吹っ切れた感じが胸を熱くさせる、新しい時代の精神を感じる名曲だ。

「テイク・イット・イージー」の過去記事はこちら

ニール・ヤング/孤独の旅路
Neil Young – Heart Of Gold

Harvest

ナッシュヴィル録音の名盤『ハーヴェスト』からのシングルで、全米No.1になった、ニール・ヤング最大のヒット曲だ。天才的なソングライターである彼の本領が発揮された名曲で、この曲もまたカントリー・ロックの進化形と言えるだろう。
極めてシンプルな曲なのに、それこそ黄金のような輝きを放つ、ノスタルジックかつ感動的な歌だ。

「孤独の旅路」の過去記事はこちら

選んだ10曲がぶっ続けで聴けるYouTubeのプレイリストを作成しましたので、ご利用ください。

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ヒストリー・オブ・ロック 1972【新たなヒーローたちの登場】Greatest 10 Songs (goromusic.com)

ぜひお楽しみください。

(by goro)