名盤100選 91 『ロジャー・ニコルズ&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズ』(1968)

コンプリート・ロジャー・ニコルズ&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズ
このアルバムを初めて聴いたときの新鮮な感動は忘れられない。

未来音楽。

そのクールで斬新なサウンドを聴いて、そんな形容が頭に浮かんだ。
そして2011年現在の今聴いても、まだ未来の音楽に聴こえる。
実は43年も前の作品なのだけど。

ロジャー・ニコルズは1967年にロジャー・ニコルズ&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズを結成して、このアルバムを1枚と、7枚のシングルを発表したがまったく売れず、すぐに解散した。
その後は職業作曲家として成功し、カーペンターズの「愛のプレリュード」や「雨の日と月曜日は」などで大ヒットもとばしている。

邦楽に詳しい人なら一聴したらすぐにわかるだろうが、このアルバムのサウンドはピチカート・ファイヴのサウンドにそっくりである。
それもそのはずで、ピチカート・ファイヴの小西康陽はこのアルバムを手本として、ピチカート・ファイヴのサウンド・コンセプトを創りあげたそうなのだ。

それにしてもこの完成度の高さ、そして唯一無比のオリジナリティはただごとではない。
前衛的な音楽ではないし、どれもシンプルな3分間ポップスでありながら、アメリカ人らしくない、むしろ欧風とも思える無国籍の響き、どの時代に聴いても色あせた感じのしないクールで美しいサウンド、摩訶不思議なコード進行、どのジャンルにも属さない孤高の傑作、まるで薄倖の天才芸術家の手になる生涯たったひとつの奇跡の名品のようである。

この作品は当時も今も、本国ではまったく評価されていない。
日本では80年代に小西康陽や小山田圭吾などが高く評価したことによってCD化され、数万枚も売ったという経緯がある。要は日本でのみ高く評価されているアルバムであるが、日本人はこのことを誇りに思っていいと思う。

そして巷ではこのアルバムを”ソフトロック”の代表的伝説的作品と祭り上げた。

ソフトロック。

わたしはしかし、このちょっと間抜けな感じのユーモアがこめられたジャンル名がけっこう好きである。
ハードロックと聞くと、なんとなく硬くて真面目な体育会系のイメージがあってとっつきにくいのだけど、ソフトロックの傑作、とか言われると、ちょっとカマっぽくて、ナヨナヨしてふざけた感じの変態チックな感じで、なんとなく聴いてみたくなるのだ。
ハードSMはちょっと怖いけど、ソフトSMならちょっと試してみたい、というのと似ているのかもしれない。
似てないか。

しかし世の中には、人をSかMかの2種類で分けたがる人がいるけど、あれは間違いなんじゃないかとよく思う。
世の中にはSもMも興味がある人と、どっちも興味が無い人の2種類なのではないかと思う。わたしなんかはやはり前者で、ソフトSとソフトMの両方に興味がありますね。
よければあなたもコメント欄でカミングアウトを。

しかしこのブログも残すところあと9回ほどになってきたので、もうそろそろハードロックの名盤も選んでおかないわけにはいかないだろう。
そんなわけで次回はハードロックの名盤に挑戦してみる。

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コメント

  1. ゴロー より:

    さすがは
    さすがはカミングアウトを得意とするフェイク☆アニさんですね。素早い回答に感謝します。

    わたしの場合はどちらかと言うと「ひとつの現場で交代制で両方の快感を得たい」タイプと言えます。

    それとなんですか、これからは☆でいくつもりなんでしょうか。面倒くさいなあ。

  2. フェイク☆アニ より:

    その件につきましては
    僕はSとかMとか興味のあるほうの人種ですね。
    さて、それではどっち?と言われたら、やはり「現場の状況によってフレキシブルに対応する」タイプです。