ヒストリー・オブ・ロック 1983【インディ・シーンの興隆とダブリンからのスーパー・ルーキー】Greatest 10 Songs

War [12 inch Analog]

1983

東京ディズニーランドが開園し、NHKのドラマ『おしん』が大ブームになったこの年、アメリカでもイギリスでもなく、アイルランドのダブリンという辺境から、本格派のスーパー・ルーキーがいきなりロックシーンのど真ん中に降り立った。彼ら、U2はそのまま80年代ロックのエースへと成長していく。

前年の「スリラー」を機にMTVはますますロック・シーンにも影響力を増したが、しかし皮肉なことにそれはイギリスで勢いを増すニュー・ウェイヴ、ニュー・ロマンティックやエレクトロ・ポップ、ヘヴィ・メタルが、堰を切ったようにアメリカへ届けられることとなった。
その怒涛の攻勢は”第2次ブリティッシュ・インヴェイジョン”と呼ばれ、アメリカのロック・シーンはずいぶんと押され気味だった。

さらにイギリスではザ・スミスなどのネオ・アコースティック勢を中心にインディ・シーンが興隆し、アメリカでも全米の大学の学生たちが運営する「カレッジ・ラジオ」の情報をまとめた《CMJ(カレッジ・ミュージック・ジャーナル)》が創刊され、その影響力によって、R.E.M.を筆頭にしたオルタナティヴ・シーンが注目されていくことになる。

以下はそんな1983年を象徴する、メジャーもインディもオルタナもころびプログレもありの名曲詰め合わせ、10組10曲です。

U2/ブラディ・サンデー
U2 – Sunday Bloody Sunday

War [12 inch Analog]

英米以外の周縁の場所、アイルランドのダブリンから、いきなりロック・シーンのど真ん中に躍り出たのがこの年のU2だった。

その後の彼らの桁外れの世界的成功は誰もが知るところだが、当時大流行中の電子楽器や過剰な加工・装飾に頼らず、本来ロックが持っている、曲の力だけで感動を与えることができることを彼らは証明してみせたようだった。

この曲は3rdアルバム『闘(WAR)』からのシングルで、U2にとって初の全英トップ10ヒットとなった出世作。

はじめてのU2【名曲10選】はこちら

シンディ・ローパー/ガールズ・ジャスト・ワナ・ハヴ・ファン
Cyndi Lauper – Girls Just Want To Have Fun

She's So Unusual [12 inch Analog]

80年代サウンドというと真っ先にわたしが思い浮かべるのがこのアルバムだ。
これぞ80年代という、チープでキラキラポップなサウンド、この世はバラ色の、ちょっと調子に乗った感じが今となっては羨ましい時代の音だ。あの頃の空気や匂いまで甦ってくるようだ。

この曲は自己破産して古着屋で働いていた30歳のシンディのデビュー・シングルで、いきなり全米2位の大ヒットとなり、アメリカン・ドリームを掴んだ代表曲だ。

「ガールズ・ジャスト・ワナ・ハヴ・ファン」の過去記事はこちら

R.E.M./レディオ・フリー・ヨーロッパ
R.E.M. – Radio Free Europe

Murmur

米ジョージア州のバンド、R.E.M.のデビュー・シングル。全米78位と、静かなスタートだったが、シンセサウンドのニューウェイヴかヘヴィメタルかという時代の中で、60年代のザ・バーズのようなフォーク・ロック・サウンドでアメリカン・ロックの原点へ回帰した彼らは、やがてカレッジ・ラジオの圧倒的な支持を得、80年代のオルタナティヴ・ロックを牽引していく存在となっていく。

「レディオ・フリー・ヨーロッパ」の過去記事はこちら

ザ・スミス/ハンド・イン・グローヴ
The Smiths – Hand In Glove

Smiths

80年代英国インディ・シーンの主役は、マンチェスター出身のザ・スミスだった。

モリッシーの独特のヴォーカル、ジョニー・マーのギター、”ネオ・アコースティック”と呼ばれた新鮮なサウンドとその聴き手の内面に深く到達しようとする真摯な歌は、軽佻浮薄のキンピカ志向の時代に、数少ない誠実で信頼のおけるバンドだった。

「ハンド・イン・グローヴ」の過去記事はこちら

アズテック・カメラ/思い出のサニー・ビート
Aztec Camera – Oblivious

ハイ・ランド、ハード・レイン

スコットランド出身でザ・スミスと同じラフ・トレードから1stアルバムをリリースしたアズテック・カメラも、ネオ・アコースティックという新たな潮流の代表格だった。

爽やかなアコースティック・サウンドとなんとなく英国らしからぬ南国のカラリと晴れたビーチを思わせるようなポップなメロディのこの曲は、英インディ・チャート1位を獲得した出世作。

エコー&ザ・バニーメン/ザ・カッター
Echo & the Bunnymen – The Cutter

Porcupine [12 inch Analog]

英リヴァプール出身のエコー&ザ・バニーメンの3rdアルバム『ポーキュパイン(やまあらし)』の先行シングルで、全英8位のヒットとなり、彼らの出世作となった。

いかにもあの時代の、あえて人間臭さを排したような、冷徹な機械が奏でるようなクールなギター・ロックだ。

「カッター」の過去記事はこちら

ニュー・オーダー/ブルー・マンデー
New Order – Blue Monday

Blue Monday (2020 Digital Master)

前年にジョイ・ディヴィジョンのフロントマン、イアン・カーティスが死去し、残された3人のメンバーで新たにスタートしたバンドがこのニュー・オーダーだ。シンセサイザーとドラム・マシンを中心にして、ロックからエレクトロへと移行し、クラブ・ミュージックのはしりとして成功を収めた。

歌詞の内容はイアン・カーティスの死について歌ったものであり、バンドの喪失感そのままの、無機的で空虚な表現の音楽となっている。

ユーリズミックス/スウィート・ドリームズ
Eurythmics – Sweet Dreams (Are Made of This)

Sweet Dreams (Are Made Of This)

英ロンドン出身のアニー・レノックスとデイヴ・スチュワートによる男女ユニット。

エレクトロ・ポップの斬新なサウンドと一風変わったクールなメロディ、そしてアニー・レノックスの印象的なルックスなどがMTV経由でアメリカでもウケて、全米1位、全英1位の世界的なヒットとなった。

イエス/ロンリー・ハート
Yes – Owner Of A Lonely Heart

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70年代には複雑難解なプログレッシヴ・ロック・バンドだったイエスが1980年に一度解散し、顔触れを変えて再結成し、他のプログレバンドたちがすでにポップ路線にシフトして成功しているのに倣ってか、この曲を筆頭とするアルバム『ロンリー・ハート』で大きくポップ路線に移行した。このような路線変更をわたしは親愛の情をこめて”ころびプログレ”と呼んでいる。

この転身は結果的に大成功で、キャリア唯一の全米No.1シングルとなった。
ただし本国イギリスでは28位と、なんだか冷たい反応だったようだ。

「ロンリー・ハート」の過去記事はこちら

ポリス/見つめていたい
The Police – Every Breath You Take

Synchronicity -Hq- [12 inch Analog]

ポリスの最後のアルバムとなった名盤5th『シンクロニシティー』からのシングルで、全米1位(8週連続)、全英1位(4週連続)とキャリア最大のヒットとなった。

邦題は一見ロマンティックだが、歌詞はスティングの結婚生活の崩壊に関わったもので、「監視」の意味が強い。
アルバムも世界的なメガヒットとなり、バンドはセールス的には絶頂期を迎えたが、バンド内の不仲によりこの年限りで活動停止し、3年後に正式に解散した。

「見つめていたい」の過去記事はこちら

選んだ10曲がぶっ続けで聴けるYouTubeのプレイリストを作成しましたので、ご利用ください。

♪YouTubeプレイリスト⇒ ヒストリー・オブ・ロック 1983【インディ・シーンの興隆と ダブリンからのスーパー・ルーキー】Greatest 10 Songs

また、apple musicのプレイリストとしても作成済みです。
apple musicをご利用の方はこちらのリンクからプレイリストにジャンプできます。

ヒストリー・オブ・ロック 1983【インディ・シーンの興隆と ダブリンからのスーパー・ルーキー】Greatest 10 Songs (goromusic.com)

ぜひお楽しみください。

(by goro)

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