Back To 1985【死ぬまでにもう一度見たい映画を考える】その3

ミツバチのささやきのラストの結末、となりのトトロの元になったわけ | MITU-Screen

【ミニシアター】

わたしが17歳で映画館に就職したその翌年、単館上映のスペイン映画『ミツバチのささやき』(73)を観た。今思えば、これがわたしが見た初めての日本とアメリカ以外の映画だったのかもしれない。

普段から洋画=ハリウッド映画みたいな感じで観ていて、あのテンポの速さやめまぐるしいカット編集や明るい照明やストーリー展開のパターンや覚えやすい顔の俳優たちなど、実はハリウッド独特のわかりやすさを徹底した作りに慣れてしまっていると、その他の国の映画がすごくテンポが遅く、暗く、顔が覚えにくく、話がわかりにくく、ダルいという印象を持ちやすかったものだ。

わたしは当時ハリウッド映画にすらまだたいして慣れてもいなかったが、それでもこのアート志向のスペイン映画の、ハリウッド映画とのあまりの違いに戸惑った。
しかしその戸惑いを超えて、主演の子役、アナ・トレントの衝撃的な可愛らしさに1時間半釘づけにされてしまった。ロリコンでもないのに、だ。まるで「純真無垢」という元素でできているかのような瞳だった。幻想的で美しい映像も良かった。この映画はぜひ死ぬまでにもう一度見てみたい。ビクトル・エリセ監督作では他に、ドキュメンタリーだが『マルメロの陽光』(92)もすごく良かったと記憶している。

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未だにこの子を超える子役を見たことがないぐらいだが、アナ・トレント主演作ではカルロス・サウラ監督の『カラスの飼育』(76)も良かった。これももう一度見てみたい。

こうした単館上映の、ハリウッド映画とは異質のどちらかと言うとアート志向の映画は、この頃から「ミニシアター系」などと呼ばれてちょっとした流行になっていく。

カラスの飼育 の映画情報 - Yahoo!映画

【ターミネーター】

この年日本公開された洋画の中でもジェームズ・キャメロン監督の『ターミネーター』(84)はちょっとした事件だった。B級作品ながら世界的にヒットし、アーノルド・シュワルツェネッガーを大スターにした。こういっためちゃくちゃにぶっ壊すバイオレンス映画が大流行する先駆けとなり、アクション映画の転換点となったように思う。

ターミネーター の映画情報 - Yahoo!映画

ジェームズ・キャメロン監督作ではこの『ターミネーター』シリーズと、翌年の『エイリアン2』(86)をもう一度見てみたい。懐かしいだろうな。

有名どころでは『タイタニック』(97)、『アバター』(09)、という作品もあるが、なんとわたしは観ていない。ちなみに、わたしが観ていない最も有名な洋画は、この2作と『スター・ウォーズ』シリーズだと思う。

【中上健次と柳町光男】

火まつり の映画情報 - Yahoo!映画

中上健次脚本、武満徹音楽、柳町光男監督というわたしにとっての大好物が詰まった『火まつり』(85)は後年にビデオで観た。中上健次にハマってから、彼のオリジナル脚本の作品としてビデオを探して見たのだった。古代神話の舞台のような熊野の美しい風景と共に、まさにザ・中上健次の世界だった。

十九歳の地図

『火まつり』以外にも柳町光男監督には中上健次の小説を映画化した『19歳の地図』(79)もある。根津甚八が覚せい剤中毒のトラック運転手を演じた『さらば愛しき大地』(82)と共にこの3作はもう一度見たい。

柳町監督の第一作『ゴッド・スピード・ユー! BLACK EMPEROR』(76)は当時実在した暴走族ブラック・エンペラーのドキュメンタリー映画で、昔は暴走族のドキュメンタリーなんてあんまり見る気もしなかったので見てないが、今では懐かしい昭和の暴走族をあらためて見てみたい気もする。

ゴッド・スピード・ユー!BLACK EMPEROR

【ヴィム・ヴェンダース】

『パリ、テキサス』もミニシアター系で、西ドイツとフランス合作の映画だ。

若い人は知らないかもしれないが、昭和の時代はドイツがコンクリの壁で西と東に分かれていて、西が自由主義、東が共産主義でどっちが良い社会になるか競い合う、実験みたいなことをしていたのだ。結果は西の圧勝で、壁は壊され、東の共産主義の元締めであるソビエト連邦もついでに崩壊した。

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そんなことはいいが、ヴィム・ヴェンダース監督の『パリ、テキサス』(84)はナスターシャ・キンスキーの翳のある美しさとライ・クーダーの心に沁みる音楽、リアルな映像で強烈な印象を残した。

さらにこの翌々年、ミニシアターに連日行列ができたことで話題になり、ちょっとしたブームを巻き起こした『ベルリン・天使の詩』(87)でわたしはヴィム・ヴェンダースにハマり、彼の監督作を遡り、ビデオを探して見るようになった。

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中でも初期のロードムービーが良かった。ヴェンダースでもう一度見たい作品は上の2作と『まわり道』(75)、『さすらい』(76)、デニス・ホッパー主演の『アメリカの友人』(77)、小津安二郎を題材にした大感動のドキュメンタリー作品『東京画』(85) 、ベル天の続編『時の翼にのって/ファラウェイ・ソー・クロース!』(93)を選ぼう。これ以降のヴェンダース作品もほぼ全部見ていると思うが、残念ながらほとんど憶えていない。

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【ミロス・フォアマン】

この年のアカデミー賞を受賞したミロス・フォアマン監督の『アマデウス』(84)も悪くなかったが、もう一度見たいというほどでもない。この監督の作品でもう一度見るとするならわたしは彼が受賞したもうひとつのアカデミー賞作品『カッコーの巣の上で』のほうを採りたい。

カッコーの巣の上で

【バック・トゥ・ザ・フューチャー】

年末にはあの『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(85)が公開して、大ヒットした。最良のハリウッド・エンターテインメントと言うべき作品だろう。

映画館で働いていると、映画が終わって出てくるときのお客さんの表情や様子で反応の良し悪しがわかるものだが、この映画はすごく盛り上がったコンサートの後みたいに、終わってもまだ残っているお客さんの熱気みたいなものが感じられるほどだった。

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このシリーズを好きな人は多いが、30年以上も経った今でも通用するのかと思い、試しに娘が高校生のときにprime videoで一緒に3作立て続けに見てみた。娘も大いに楽しんでいたので、今でも通用するのだなあと嬉しく思った覚えがある。

【ロン・ハワード】

コクーン (字幕版)

年末にはロン・ハワード監督の『コクーン』(85)も公開された。ロン・ハワードは『アメリカン・グラフィティ』(73)でスティーヴ役を演じた俳優だったが、監督に転身してから良い作品を多く撮った。安定感とどこか温かみのある作風で、好きな監督のひとりだ。

往年の名優たちが演じるじいさんばあさんたちが、宇宙人の船で一緒に地球を去ろうとするSF映画『コクーン』は、わたしもじいさんたちの年齢に近づいてきたのでより共感しながらもう一度楽しめるかもしれない。

バックドラフト (字幕版)

ロン・ハワード監督の他の傑作では、カート・ラッセル主演で消防士たちの活躍を描いた『バックドラフト』(91)、トム・ハンクス主演の実話映画『アポロ13』(95)、メル・ギブソン主演の『身代金』(96)、アカデミー作品賞を獲った『ビューティフル・マインド』(01)などももう一度見てみたい作品だ。

(goro)

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