≪オールタイム・グレイテスト・ソング 500≫ その16
Otis Redding That’s how strong my love is
わたしは30歳になるまでソウルミュージックという音楽をほとんど聴いてなかったのだけど、なにかの気まぐれでオーティス・レディングのCDを買ってみたのがきっかけだった。
オーティスの声以上にやけにベースが存在感を主張する、その異様なバランスのサウンドが面白いと思い、それから2年ぐらいはソウルとR&Bばかりを聴き漁った思い出がある。
おれの愛はなんて強いんだろう!って自分で自分の愛の強さに感嘆している、いかにもオーティスのイメージにぴったりな代表曲。
発売が1965年の1月頃なのだけど、ストーンズはちょうどその時期に録音中だったアルバム『アウト・オブ・アワ・ヘッズ』で直ちにカバーしている。
たぶんミック・ジャガーあたりが、≪話題の新人ソウル歌手・オーティス≫のレコードを発売と同時にチェックして、「なんて凄い曲なんだ!」ってなって、すぐにみんなで練習して、急遽ニュー・アルバムに入れたのかもしれない、なんて想像したりする。
その前のアルバム、『ローリング・ストーンズvol.2』でもその年に発表されたオーティスの「ペイン・イン・マイ・ハート」をカバーしているし、同世代で、ライバル的な関係でもあるはずだが、よほどお気に入りだったのだろう。
ミック・ジャガーのヴォーカルからは、オーティスへのリスペクトもモロに感じられる。
そしてそのオーティスのほうも、「じゃあおれも」みたいな感じで、ストーンズの「サティスファクション」を同年にカバーしている。
イギリスとアメリカで海を挟みながら、お互いにリアルタイムでカバーし合うなんて、今の時代にはありえないことだ。
しかも黒人のソウル歌手と白人のロックバンドである。
素晴らしいことだ。
ちなみにCDで聴くと「異様に存在感の強いベース」も、先日買ったアナログレコードで聴いてみるとふつうの、ちょうど良いバランスだった。
オーティスはやっぱりアナログレコードで聴くべきなのかもしれない。
RCサクセションの「去年の今頃」という歌に、
二人でこたつで 紅茶を飲もうよ
オーティスのレコードを聴きながら ガッガッウッ(作詞:忌野清志郎 作曲:肝沢幅一)
という歌詞があって、わたしはオーティスをレコードで聴くのが昔からの、ちょっとしたあこがれでもあったのだ。