世界を制した狂気の沙汰の超大作 〜スマッシング・パンプキンズ『メロンコリーそして終わりのない悲しみ』(1995)【最強ロック名盤500】#50

メロンコリーそして終りのない悲しみ(通常盤)

⭐️⭐️⭐️⭐️

【最強ロック名盤500】#50
The Smashing Pumpkins
“Mellon Collie and the Infinite Sadness” (1995)

そうか。
3日に分けて聴けばよかったのか。

1995年10月にリリースされたスマッシング・パンプキンズの3rdアルバム『メロンコリーそして終わりのない悲しみ』は、まさかのCD2枚組28曲、121分の大容量だった。アナログ盤では3枚組の超大作である。オリジナル・アルバムで3枚組なんて、たぶん1980年のクラッシュ『サンディニスタ!』以来のはずだ。

ディランの『ブロンド・オン・ブロンド』、ビートルズの『ホワイト・アルバム』、ストーンズの『メイン・ストリートのならず者』、スプリングスティーンの『ザ・リバー』、クラッシュの『ロンドン・コーリング』そして『サンディニスタ』など、こういう大作を発表するときはだいたいがそのアーティストのキャリアのピークの頃で、創作意欲が絶頂に達しているときのことが多いものだ。スマッシング・パンプキンズのピークというか、ビリー・コーガンの創作エネルギーの大絶頂もこのあたりだったのだろう。

Disc 1
 1 メロン・コリー・アンド・ジ・インフェニト・サッドネス
 2 トゥナイト、トゥナイト
 3 ジェリーベリー
 4 ゼロ
 5 ヒア・イズ・ノー・ホワイ
 6 バレット・ウィズ・バタフライ・ウィングス
 7 トゥ・フォーギヴ
 8 ファック・ユー(アン・オード・トゥ・ノー・ワン)
 9 ラヴ
10 キューピッド・ドゥ・ロック
11 ガラポゴス
12 マズル
13 ポルセリーナ・オブ・ザ・ヴァスト・オーシャンズ
14 テイク・ミー・ダウン

Disc 2
 1 ホエア・ボーイズ・フィアー・トゥ・トレッド
 2 ボディーズ
 3 サーティ・スリー
 4 イン・ジ・アームズ・オブ・スリープ
 5 1979
 6 テールズ・オブ・ア・スコーチト・アース
 7 スルー・ジ・アイズ・オブ・ルビー
 8 スタンブレイン
 9 X.Y.U.
10 ウィ・オンリー・カム・アウト・アット・ナイト
11 ビューティフル
12 リリー(マイ・ワン・アンド・オンリー)
13 バイ・スターライト
14 フェアウェル・アンド・グッドナイト

しかし28曲というだけでも狂気の沙汰なのに、サウンドも重量級の地獄の沙汰みたいなアルバムなので、なかなか最後まで聴き通せなかったものだった。

しかしこれはもう中華の満漢全席みたいなもので、それを1日で食べ終えるというのは土台無理な話なのである。アナログ3枚分なのだから、3日ぐらいに分けて聴くのが正しい聴き方ではないかと思い、今回あらためて聴き直してみた。結局6日かかったが。

いやあ、楽しめた。
あえて途中でやめると、もっと聴きたくなるものだ。
1曲1曲が大盛り仕様なので、ニンニク増しの二郎系ラーメンを食べてるぐらいの感覚だが、それだけ満足度は高い。

発売当時は「ゼロ」「バレット・ウィズ・バタフライ・ウイングス」「1979」などが気に入っていたが、あらためて聴き直してみると、後半「1979」より後の、テンポを落とした静かで滋味深い曲が続くあたりがまた良い。

当時驚いたのは、このアルバムが全米1位となったことだった。しかも全世界で900万枚も売れた。

1995年10月という、わたしが29歳と1ヶ月となったこの月に、本作とオアシスの『モーニング・グローリー』がリリースされ、どちらも日本を含む世界的なメガヒットとなった。

オアシスとスマパンが世界を制したあの瞬間、90年代ロックのキーワードだった「オルタナティヴ(また別の)」という言葉が役目を終えたと思ったものだった。

1989年にストーン・ローゼスの登場から始まった90年代のロック革命は、ここで完全に成就したような気がした。わたしはもうお腹いっぱいで、手を合わせて「ごちそうさまでした」と呟く、そんな気分だった。

ああ、楽しかった。

↓ 全米22位と、初めて全米シングルチャートにランキング入りした「バレット・ウィズ・バタフライ・ウィングス」。こんな恐るべきアルバムを作るとやはり顔つきまで変わってしまうのだな、と思った。

↓ 3枚目のシングルとなった「ゼロ」。コーガン君はなぜか髪の毛までゼロに。
わたしは本作の中で、この曲がいちばん好きだな。

(Goro)

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