クイーン/レディオ・ガ・ガ(1984)

ザ・ワークス

【80年代ロックの快楽】
Queen – Radio GaGa

わたしは「ボヘミアン・ラプソディ」などいくつかの変態的な歌は面白いと思ってはいたものの、青春期をパンクの沿線で育ってしまったせいで、クイーンがいる路線は少し遠くて、あまりよく知らずに来たのだった。

映画『ボヘミアン・ラプソディ』では、ラストのライヴ・エイドの場面で「ボヘミアン」に次いで歌われるこの異様に力強い、英雄的な曲にまたわたしは勝手に変態性を感じてしまって、記憶にべったりと貼りついてしまったのだった。

歌詞を調べてみると、10代の頃にラジオから音楽を教わったけど、今はショーやスターは見るもので、耳を使って聴くことが無い、時代は変わってしまった、と歎き、ラジオを聴こう! ラジオには面白いことや夢中になれることがあるはずだ! と歌う歌であった。ドラマーのロジャー・テイラーが書いた曲で、全英2位、全米16位のヒットとなった。

なにしろ35年前の曲なので、言ってることが古すぎて若者には伝わらないかもしれない。

しかし、わたしも少年時代は、テレビなんかよりラジオに夢中になったものだった。

AMからFMまで音楽番組を毎週欠かさず聴き、チャート番組はその順位までノートに書き写し、歌謡曲はもちろん、洋楽に出会ったのもラジオからだった。

あれほど夢中になったラジオもいつのまにか聴かなくなっていた。

今やCDの時代も終わって、音楽もネットで聴く時代だ。
自分の好きなものだけを選んで配信で聴いたり、YouTubeで検索して見たり聴いたりする時代だ。
好きじゃないアーティストや、苦手なジャンルを聴くことなく、好きなアーティスト、好きなジャンルだけを聴くことが出来る。

ラジオはそうはいかなかった。
聴きたい音楽が流れるまで、延々と未知の音楽や苦手な音楽も我慢して聴いていなければならなかった。

でも、そうやって我慢して聴いていたものが、いつのまにかその良さを理解できたり、あるいはこちらの好みが変化したりして、いつのまにか好きになっていたりしたものもたくさんある。
年を取ると食べ物の好みが変わるのと同じだ。若い頃は好きではなかったものが、年を取って好きになったり、その逆もあったりする。

ラジオから流れてくる、歌謡曲や演歌から、テクノやヘヴィ・メタルまで、なんでも耳に入って来ざるを得ない、ああいう音楽の聴き方ができたことが今ではなにより幸福な体験だったと思う。

それと、わたしがあまりミュージック・ビデオやライヴ映像などの作品に興味がなく、耳だけで聴く音楽の楽し方が今も変わらないのは、やっぱりラジオとレコードで育ったせいなんだろうなあ、と思う。

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