ガムボール/ハイ・オア・ロウ(1991)

Special Kiss

【グランジ・ロックの快楽】
Gumball – High or Low

ガムボールは、ダイナソーJrの『グリーン・マインド』、ティーンエイジ・ファンクラブの『バンドワゴネスク』、ポウジーズの『フロスティング・オン・ザ・ビーター』などのプロデュースでグランジ祭りの期間に引っ張りだこだったプロデューサー、ドン・フレミングを中心にしたニューヨークのバンドだ。

他のバンドのプロデュースでは名盤を連発し、ブレイクさせているのに、自分のアルバムはそれほどでもなくてとうとうブレイクしなかったという、ときどきいるタイプの職人気質アーティストである。
アーティストとしての個性に欠けるのか、曲が書けないのか、華がないのか、売れない理由はよくわからない。

この曲は1991年、グランジ・ブーム真っただ中に発表された1stアルバム『スペシャル・キッス』の収録曲だ。

パンク寄りのガレージ・ロックで、チープでロー・ファイなサウンドは、当時のオルタナ・ロック・ファンたちに好意的に迎えられた。

80年代までにロックはハイ・ファイになりすぎ、ゴージャスになりすぎ、スタイリッシュになりすぎ、商業主義になりすぎ、その反動で90年代ロックは、ロー・ファイで、チープで、粗削りで、非商業的な音楽が支持されたのだった。

ガムボールの『スペシャル・キッス』には、大名曲と呼べるものは残念ながら無いが、これぐらいの短くて粗削りでだいたい同じような「まあまあ」か「ボチボチ」の曲が14曲収録されて35分と、ラモーンズやバズコックスのような感じの、70年代パンクの流儀を踏襲したようなアルバムとなっている。

その中からこの「ハイ・オア・ロウ」を選んでみたものの、このチョイスが合ってるのかどうかすらよくわからない。
たぶん、どれでもそんなに変わらないとは思うけれども。