名盤100選 23 チャック・ベリー『ベスト・オブ・チャック・ベリー』

ベスト・オブ・チャック・ベリー

今年82歳、驚くべきことにいまだに現役でステージをこなしている。
ロックンロール誕生以来、多くのロックンロール・ヒーローがこの世から去ったが、でもそのロックンロールを作った本人はまだ生きている。
王様はまだ生きているのだ。

チャック・ベリーはツアーのためにバンドを組んで引き連れたりはしないそうだ。
ライブをやる場所で適当にメンバーを集めて演奏するらしい。プロでもアマでもあまりこだわらないそうだ。
現在もそうなのかはわからないが、1987年の素晴らしいドキュメンタリー映画『ヘイル・ヘイル・ロックンロール』では少なくともそのように言っている。

この王様は、楽器が弾ける奴ならチャック・ベリーの曲を演奏できないやつなどいない、と信じているらしい。
それはまあごもっともというほかない。
すべてのバンドマンはこの王様の子供たちであり、これは彼らに課された唯一の義務なのだ。
世界中のプロのミュージシャンや、アマチュアでバンド活動をしている人たちも、いつこの王様がやってきて「おまえ弾け」と言われるかわからない。日頃から準備しておいたほうがいいだろう。

チャック・ベリーの音楽は、そのあまりのシンプルな完成度に、まるで人の手によって創られたとは思えないような気がしてくる。
単純だが美しい伝承曲やわらべうたのように、誰がつくったかわからないが誰もが知っている歌のような、そんな錯覚にとらわれる。

不思議なことに黒人のチャック・ベリーが創造した「ロックンロール」という音楽はいつのまにか白人がやる音楽になってしまった。
なぜ黒人はロックンロールをやらなくなってしまったのだろう。わたしはそれがどうもわからない。

ただし代表曲の「ジョニー・B・グッド」は実は盗作だという説がある。
白人のティーンエイジャーがダンスパーティーで演奏しているのをたまたま聴いていたチャックの従兄弟が、電話越しにその曲をチャックに聴かせたということらしい。
これはバック・トゥなんとかという映画にもなっていて、わたしも見たことがある。

アメリカ人の年寄り、70~80歳ぐらいのじいさんばあさんをテレビや映画で見かけると、ああこの人たちがリアルタイムでチャック・ベリーやエルヴィスを初めて聴いたんだなあとあらためて思うことがある。
うらやましい。
あの当時にチャック・ベリーやエルヴィスの出来立てほやほやのロックンロールがラジオから流れた瞬間、彼らはどれだけぶっとんだことか。どれほど興奮したことか。
その瞬間を体験できたあの世代が、わたしにとっては世界で最もうらやましい人々だ。

チャック・ベリーはデビュー前にサー・ジョン・トリオというバンドで演奏していた。
そのステージがマディ・ウォーターズの目に留まり、彼の口利きでチャックはチェス・レコードからデビューすることになった。1955年、デビュー曲は「メイベリーン」で、いきなりビルボード誌第5位の大ヒットとなる。
王様を選んだのはやはり神様だった。
まるでロックンロール創生期の、神話の一節のようだ。

記事を書いた人(Goro)

愛知県在住。中学卒業後、無知蒙昧のまま社会にさ迷い出て、底辺職を転々した後、地元の映画館に拾われる。映画館に10年勤めた後、レンタルビデオチェーンのバイヤーを20年勤め、現在は再び底辺職で肉体労働の日々に返り咲く。心に平安が訪れている。生活に不満はなし。音楽にはいろいろと救われている。「映画は映画館で観なきゃダメ派」ではない。

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コメント

  1. ゴロー より:

    義務ですから
    彼がアホなのは確かかもしれないけど、でもフェイク・アニにはわたしの言いたかったことがちゃんと伝わったなあと思いましたよ。

  2. headfuck より:

    ↓の人へ
    アホか、お前は…(笑)

  3. フェイク・アニ より:

    その日のために
    うん、わかった。王様いつ来るか解らんし準備しとくわ。

  4. ゴロー より:

    とにかくキース・リチャーズ、そしてローリング・ストーンズに感謝だ
    あ、そうか、”You Never Can Tell”はパルプ・フィクションのあのツイストコンテストで踊ってた曲ですね。いま思い出しました。そういやそうだ。
    わたしはこの曲はエミルー・ハリスのカントリー風のカバーも好きですね。きれいです。

    “譜面に起こした”って感じはよくわかるなあ。
    誰でも出来る曲のはずなんだけど、やっぱり誰がやっても様にならないということですね。
    むしろちゃんとしたプロのミュージシャンがやるより、組んだばっかりのアマチュア・バンドが勢いだけでやるほうが意外にそれらしくなったりするのかもしれませんね。

    「ヘイル・ヘイル・ロックンロール」は素晴らしい映画でしたね。あの映画がもしなかったらわれわれの世代のチャック・ベリーに対する理解はもっともっと浅いままだったと思う。キース・リチャーズに感謝。ああ、もう一回見たくなってきたなあ。

    “Raindrops Keep Fallin’ On My Head”は「明日に向かって撃て」ですね。ポール・ニューマンが自転車で遊ぶところ。大丈夫、これはよく間違えるんです。

  5. r-blues より:

    ギターケースに靴と歯ブラシ…以上!
    チャック・ベリー出ちゃいましたね!
    私はBeatles, Stonesからのルーツとして巡り会ったクチです。
    演奏が白人R&Rとは違い、思いっきりR&Bなので、ガキの頃にはスゴク戸惑ったのを憶えてます…。

    さてゴロー氏のNo.2に挙った”You Never Can Tell”。
    私その曲は映画「パルプ・フィクション」のサントラで初めて知ったんです。いや、聴いた事あったのかもしれないけど記憶に残ってなかったのかも。今は私もベスト3に挙げちゃうくらい好きな曲です。
    その例と同じなのが、E.プレスリーの”A Little Less Conversation”
    “です。映画「オーシャンズ11」で知り、ハマりました。
     ん~、私にはやっぱ映画と歌(音楽)は切り離せません(ハリウッド症候群ですかね(^o^)..)。
    なにせmyフェイバリットソングは”Raindrops Keep Fallin’ On My Head”(from「雨に唄えば」)って言いきって陶酔してますから(ToT)..自爆。

    No.6の”Maybellene”は、やっぱ映画「Heil Heil…」で見て大好きになったナンバーです。

    しかし、やっぱり、あったり前のベタベタに私はNo.1を持って行きます。
    あの曲は、何種類かオリジナルがあって、コレは白人向けMIXだとか、デマっぽい噂があるけど確かに…それぞれグルーヴィーで。
    チャックの歌は8ビートに近いけど、リズムはメチャ跳ねてるとか..コレはそうじゃないとか….嗚呼やはりR&Bだ!楽しい!おもろい!。
    他のアーチストのこの曲のカバーには全く面白いものが無いのは、この曲を譜面に起こしたような演奏しかしないからだろうな、と思うのです。
    唯一、ストーンズだけはこのノリを踏襲してるなと思うんですが、ストーンズフォロワーに於いては皆無に感じます…無念。

    「イエス・キリストはユダヤ教徒」だったように、
    「チャック・ベリーはR&Bアーチスト」なんだと思いました。

    1.Johnny B. Goode
    2.Rock And Roll Music
    3.You Never Can Tell
    4.Maybellene
    5.School Days
    6.Sweet Little Sixteen.
    7.Roll Over Beethoven
    8.Little Queenie
    9.Too Much Monkey Business
    10.Carol