T.レックスを初めて聴いたのはたぶん19か20歳頃のことだったと思う。
聴いたのはこのアルバムだった。1曲目の「メタル・グルー」を聴いただけですぐに好きになった。
一度聴いただけで好きになる、なんてこともあの頃はよくあったのだ。
今は滅多にない。
浦沢直樹の『20世紀少年』という漫画が映画になって大ヒットした。
わたしは漫画は読んだが映画は見ていない。
DVDになってもたぶん見ないだろう。
わたしは漫画という優れた芸術形態のいちばん大事なポイントは、絵が止まっていることだと思う。
連続した動きの中のどの一瞬を切り取れば読者に感動や興奮を与えられるか、そして次のコマ、次の一瞬へどう跳躍するか、それを直感的に選び取るのが優れた漫画家で、われわれはその静止した絵の美しさや次の静止した絵への的確なあるいは意外な跳躍の仕方で感動を覚えるのである。
われわれは頭の中で絵を連続させたり、動いているように想像して楽しむわけではないのだ。
これは連続した動きを動画で見るよりもっと楽しいことである。
それを実写でもアニメでも、連続した退屈な動画に戻してしまっては、まったく面白さを失ってしまうのである。
『20世紀少年』という漫画のタイトルはT.レックスの「20th センチュリー・ボーイ」から取られている。
物語冒頭で中学生の主人公は、放送室を乗っ取ってこの「20th センチュリー・ボーイ」のレコードを校内に大音量で流す。
「そうすればなにかがかわるかもしれない」と思ったからだ。
大昔のこと、まだ「ロックが世界を変えるかもしれない」と信じられていた頃の話である。
でも、なにも変わらなかった、というところからこの物語は始まる。
でも、やっぱりなんか変わったんじゃないか、というところでこの物語は終わる。
この漫画は、ストーリーは本当に面白くないが、それ以外のところはなかなか面白かった。
映画『20世紀少年』のCMや番宣でこれでもかというぐらいこの曲がかかっていた。
この曲は本当に素晴らしい。最初の10秒で好きになるはずなので、せっかちな人にもおすすめである。
そのうえなんの悩みもない曲なので、悩んでばっかりいる人や、本当になんの悩みもない人にもおすすめである。
わたしは最近は、こういうものが本当にホンモノの、ロックというものではないだろうか、と思い始めている。
『ザ・スライダー』はジャケも素晴らしい。
これは元ビートルズのリンゴ・スターの撮影による。
このアルバムには「メタル・グルー」や「テレグラム・サム」のようなT.レックスの代表曲が入っていて、もちろんそれも良いがそれ以外の、1曲の内容が異常に薄い、わたしが最も愛する類の単純さとあらびきが、まるで100円ショップのようで楽しい。
T.レックスはベスト盤もいいが、このアルバムのような作りかけみたいな曲がいっぱい入っているオリジナル・アルバムのほうがずっと琴線にふれる。
T.レックスはいちおうバンドではあるが、印象としてはマーク・ボランのソロ・プロジェクトのようなものである。
マーク・ボランはルックスがエロ可愛かったし、音楽も100円ショップでとっつきやすかったので、ものすごく人気があった。1971年から73年の3年のあいだのことである。
でも性格が悪いので74年には仲間に去られてひとりぼっちになって、麻薬中毒になったりデブになったりして人気がなくなった。
77年には息子が生まれて、よっしゃもう一回頑張るぞ、と再起して生活も改め評価も持ち直しつつあったが、奥さん以外の彼女が運転する車に同乗していて、街路樹にぶつかって、29歳で旅立った。
コメント
爆笑
おいおい、マーク・ボラン抜きT.REXってそんなのアリかよぉ。
マイケル・シェンカー抜きのマイケル・シェンカー・グループみたいなもんだろ。肉抜きの牛丼みたいなもんだろ。
全員ニセモノでもわかんないし。
久々に笑わせてもらった。
ロック史に残る最強のトホホ伝説だな。
ミッキー・フィンと私
いやー、いろいろ検索してみたら仰天事実がいくつか。
なんと、マーク・ボラン抜きT-REXが1999年に来日していた!
その後、2003年にミッキー・フィンが亡くなっていた!
っていうかミッキー・フィンって生きてたんだ!
いやはや今更ながらネットって凄いっすね。
そうよね~
アメリカ人って”超絶テク系”好みよね~。
では、技術のないゆるい私は英国で頑張るか!(←ウソ)
ゆるい魅力
あっ。
いいなその箇条書き。
いつかパクらせてもらうわ。
①と②はわたしも同感ですね。だから選曲も似てます。
“20th Century Boy”はやはり大人気なんですね。
この曲はT.REXが来日したときに日本の東芝EMIのスタジオで録音されたということだ。
日本ではよく売れたが、アメリカでは全然売れなかったらしい。
パンクもそうだけど、アメリカ人って技術の無いゆるいアーティストにあんまり寛容じゃないですね。
マーク・ボランと私
①声が好き。特に低音の気持ち悪さが好き。
②ミドルテンポのブギーも良いけど、スローな曲が好き。
③ロンドンで蝋人形を見て「背低くっ」と思ったけど、オレンジ色のキラキラしたジャンプスーツがカッコ良かったから好き。
④やたらとギターでウニウニしたヴィヴラートをかけるから好き。
⑤カッコ良くない写真を見た事が無いから好き。
⑥訳詩を読んでも、何の事だかサッパリ解らないから好き。
⑦たぶん中3の時にはじめて「メルグル、イーッザチュ」を聴いたときからずっと好き。
⑧高2の時に同級生の女子がライヴの音源を貸してくれて聴いたとき、無茶苦茶下手クソだったけどドキドキしたから好き。
MY BEST 10 SONGS
1.20th Century Boy
2.Ballrooms Of Mars
3.The Slider
4.To Know You Is To Love You
5.Teregram Sam
6.Main Man
7.Metal Guru
8.Ride a White Swan
9.Children Of Revolution
10.Get It On
強烈に
好きな7曲にしました。
かなりグレイテストヒッツな選曲ですんません。
1.20th CENTURY BOY
2.Get it on
3.Metal Guru
4.Telegram Sam
5.The Slider
6.Solid Gold Easy Action
7.THE GROOVER
ほかにも好きな曲はあるんだけど、これこそT.REXってのでいっときました。
ヨレヨレ8ビート
r-blues氏へ
ヨレヨレ8ビートが魅力…と言われたら、腕はあるけど売れないミュージシャンたちは面白くないでしょうね。
でも音楽というのは正確なだけで人の心をつかめるものではないし、いや芸術はすべてそうだけど、本人すら意図しない侘び寂びのような説明のつかないマジックの部分に人は惹かれたりする。
でも計算じゃないから、長く続かない。本人たちも、結局なにが良くて売れて、なにが悪くて飽きられたのかわからないままなんじゃないかなと思います。
そう思うとローリング・ストーンズやU2のように長い間売れ続けているバンドはやっぱりたいしたものだなと思います。
funnyfaceさんへ
どうぞ堂々とミーハーな選曲をお願いします。
わたしもたぶんr-blues氏ほど聴いてはいないです。
わたしの選曲もベスト盤と『ザ・スライター』と『電気の武者』からだけですから。
キター!
遂にお出ましですね!
いいね~いいね~いいよ~!
多分、私は全曲を知っているというワケではないと思うので(毎度の事ながら)またミーハーな選曲をして載せますね。
r-blues氏:このジャケがリンゴ・スターの撮影ってこと、、、私は
知っていましたよ。フフフ、、、
The Groover!!!
19歳の頃…私はギターをテケテケタリラリという風に弾くのが嫌になってた当時、T.REXなぞをよく聴いてました…。
>『ザ・スライダー』はジャケが素晴らしい。
マジすか!?あの最近ニュースの「もうファンレターはよこさないでくれ」のリンゴスター氏撮影でしたか!
“The Who”,”Diana Ross&Supremes”も大好きですがコメントしそこなったので、気合い入れて10曲選びました。
~T.Rex’s Fabulous 10 Songs~
1.The Groover(英国”ナイト級”のヨレヨレ8ビート!*)
2.Telegram Sam(極上のヨレヨレ8ビート!*)
3.Jitterbug Love(Marshallの悦びとヨレヨレ8ビート*)
4.Solid Gold Easy Action(リズムチェンジの心地よい)
5.20th Century Boy(Marshallの悦びx2)
6.Midnight(Marshallの悦び+ワウの悦び)
7.Get It On()
8.Sunken Rags()
9.Metal Guru()
10.Born To Boogie()
*=”ヨレヨレ8ビート”は本気で褒め言葉です(ワウの悦び)。