【映画】『レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ』(1989フィンランド・スウェーデン) ★★★★★

レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ/レニングラード・カウボーイズ、モーゼに会う 【HDニューマスター版】(DVD)

【音楽映画の快楽】
Leningrad Cowboys Go America

監督:アキ・カウリスマキ
出演:マッティ・ペロンパー、レニングラード・カウボーイズ
音楽:マウリ・スメン

フィンランドのアキ・カウリスマキ監督の、32歳のときの大傑作。

わたしはこの1作でカウリスマキ監督のファンになり、その後も彼の監督作品を追い続けたものだった。

大げさな芝居をしない、無表情で動きの少ない演技、説明的なセリフを排し、引きの映像と長い間による笑いなど、まさにハリウッド映画のすべて逆を行くような方法論の、当時は革命的な作品だった。

尖ったリーゼントと尖った靴という見た目が特徴的なシベリアのバンド、レニングラード・カウボーイズが、独裁的なマネージャーに引率されて売れるためにアメリカへ渡り、極貧の旅を強いられ、様々なトラブルに見舞われながらメキシコにたどり着くというロード・ムーヴィー。爆笑の連続である。

最初はロシアのポルカなどを演奏していたのが、アメリカで売れるためにロックンロールを覚えたり、演奏会場の地域性に合わせてカントリーを演奏したり、ステッペンウルフの「ワイルドで行こう」を演奏したりと、ロック・バンドとして成長していく様も楽しい。

この作品に中古車ディーラーの役で出演しているジム・ジャームッシュもカウリスマキ監督と作風に共通するものがあるけれど、日本では初期の北野武監督の作風がまさにこれにそっくりだった。

北野監督の初監督作『その男、凶暴につき』が公開されたのが、『レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ』の日本公開の1か月後である。

フィンランドと日本という遠く離れた国から、この2人が奇しくも同時期に出て来たというのは、時代の要請だったとしか思えないものがある。

『レニングラード・カウボーイズ モーゼに会う』の記事はこちら