マディ・ウォーターズ【名曲ベストテン】MUDDY WATERS Greatest 10 Songs

Muddy Mississippi Waters (Dig)

初期のマディ・ウォーターズの音楽は、今聴いても生々しく、刺激的で、圧倒される。

すべてのロックの父であるという意味で神様的な人物には違いないのだけれど、神様の音楽にしては、リアルすぎるし、エロすぎるし、熱い感情と、煮えたぎるようなエモとモジョを感じる。

彼の音楽からプンプン匂う生臭さや、暴力的な音色、底知れぬ苦悩によって刻み込まれた傷痕は、ロックがその奥に本来持ち続けていなければならない核のようなものに思える。
ロックとポップスの違いは、それがあるかないかの違いなのかもしれない。
ここでは、そのロックの核となったものが、まだなんのコーティングもされず、剥き出しのまま聴ける。

わたしは、いろんなロックを聴きすぎて、なにがなんだかわからなくなると、ここに帰って来る。
そして本来の姿を思い出して、ロックを嫌いにならずに済むのだ。

以下は、わたしが愛するマディ・ウォーターズの至極の名曲ベストテンです。

第10位 ルイジアナ・ブルース(1953)
Louisiana Blues

マディの自作で、米R&Bチャート10位となったヒット曲。

歌とギターがマディ、ハーモニカはリトル・ウォルター、そしてビッグ・クロフォードのベースと、エルジン・エヴァンスの「洗濯板」による素晴らしい演奏だ。彼らはどうやら、汽車を模しているらしい。

こういうのを聴くとホント、ロックにシンセサイザーやコンピューターなんてまったく要らないんだなあとあらためて思ってしまう。

第9位 ローリン・アンド・タンブリン(1950)
Rollin’ and Tumblin’

「偉大なデルタ・ブルース」と呼ばれる作者不明のこの曲は、1929年にハンボーン・ウィリー・ニューバーンによって「Roll and Tumble Blues」のタイトルで最初にレコード化された。

その後多くのブルースマンが録音したが、このマディのバージョンが最も有名になった。

シンプルなリフの繰り返しだけど、速めのテンポに乗ってすでに充分ロックっぽく聴こえる。

第8位 アイ・キャント・ビー・サティスファイド(1948)
I Can’t Be Satisfied

1948年に発表されたマディ・ウォーターズの3枚目のシングル「ゴーイング・ホーム」のB面として発表された、マディの自作曲。米R&Bチャート11位と、初めてのチャート・イン・シングルとなった。

「苦労ばかりで満足なんてできやしない。泣けてくるぜ」と歌う、マディ(vo,g)とビッグ・クロフォード(b)の2人による演奏だ。
そのグルーヴはまさに、ロックンロールの原典を聴いているようだ。

「アイ・キャント・ビー・サティスファイド」の過去記事はこちら

第7位 トラブル・ノー・モア(1955)
Trouble No More

米R&Bチャート7位と、マディが乗りに乗っていた時代のヒット曲で、スリーピー・ジョン・エスティスの「サムデイ・ベイビー・ブルース」を元に改作した曲。

リトル・ウォルター(hmc)、ジミー・ロジャース(g)、ウィリー・ディクソン(b)、オーティス・クレイ(p)、フランシス・クレイ(d)という、チェス・レコード黄金時代の最強布陣だ。

スイングするようなビートと、サビがカッコいい歌メロが印象的だ。

第6位 ガット・マイ・モジョ・ワーキング(1956)
Got My Mojo Working

プレストン・フォスター作、「おれのモジョが動き出すぜ!」と歌うマディの代表曲。

モジョを説明すると長くなるので割愛するが、簡単に言うと「興奮して来たぜ! ビンビンだぜ!」みたいなところだ。いやらしいことを想像してしまうだろうけど、決して間違いではない。

ライブでアンコールの最後に演奏されて大盛り上がりになるのが常だった、マディ流の大ロックンロールだ。

「ガット・マイ・モジョ・ワーキング」の過去記事はこちら

第5位 フーチー・クーチー・マン(1954)
Hoochie Coochie Man

「おれが生まれる前、ジプシーの女がおふくろにこう言った。生まれてくる赤ん坊はきっと、女という女を悶絶させる男になるよ、と」

そんなお下品極まりない歌い出しで始まる、タイトルがそのままマディの異名となった代表曲だ。

シカゴ・ブルースの名曲を多く書いた、マディ・ウォーターズ・バンドのベーシストで名ソングライター、ウィリー・ディクスン作だ。初めてフルバンドで録音されたシカゴ・ブルースのクラシックでもある。

米R&Bチャート3位と、マディにとってのチャート最高位となった。

「フーチー・クーチー・マン」の過去記事はこちら

第4位 アイム・レディ(1954)
I’m Ready

ロックンロール誕生前夜の1954年に、R&Bチャート4位まで上がった、ヒット曲だ。

「おれは準備できてるぞ!」と豪快にどやしつける、男子はたじろぎ、女子は体が火照ってたまらなくなる一曲だ。

「アイム・レディ」の過去記事はこちら

第3位 マニッシュ・ボーイ(1955)
Manish Boy

マディの「フーチー・クーチー・マン」を元にしてボ・ディドリーが「アイム・ア・マン」を書き、さらにその返答として歌ったのがこの「マニッシュ・ボーイ」だ。米R&Bチャート5位のヒットとなった。

冒頭のマディのヴォーカルとギターが絡み、イントロが始まる瞬間だけでもうシビれる。
サビの「俺は小僧じゃねえ、本物の男だ!」とシャウトするところは鳥肌が立つほどカッコいい。

「マニッシュ・ボーイ」の過去記事はこちら

第2位 アイ・ジャスト・ウォント・トゥ・メイク・ラヴ・トゥ・ユー(1954)
I Just Want to Make Love to You

ロックにとっての旧約聖書となった大名盤『ザ・ベスト・オブ・マディ・ウォーターズ』のオープニング・トラックとして、強烈なインパクトを与える名曲だ。

ウィリー・ディクスン作で、米R&Bチャート4位のヒットとなった。
あの野太い、床も壁も揺るがすような大声で「おれはただ、おまえとメイクラヴしたいだけなんだ!」と歌うラヴソングだ。

こんなことを言われた女子は、恐ろしくてチビるか、嬉しくてチビるか、どっちにしてもチビるだろう。

リトル・ウォルターの強烈なハーモニカはロック、ブルース史上に残る名演だ。

「アイ・ジャスト・ウォント・トゥ・メイク・ラヴ・トゥ・ユー」の過去記事はこちら

第1位 ローリン・ストーン(1950)
Rollin’ Stone

ザ・ローリング・ストーンズの名前の由来となったことでも有名な1950年のシングルで、マディの作。

マディが独りで演奏しているにもかかわらず、歌とギターが別人格で会話をしているようなこのディープなブルースは、異様な緊張感と深遠な感動に包まれる、濃密な3分5秒間だ。

マディが最高のヴォーカリストであると同時に最高のギタリストでもあることはこの1曲でもわかるはずだ。

「ローリン・ストーン」の過去記事はこちら

以上、マディ・ウォーターズ【名曲ベストテン】MUDDY WATERS Greatest 10 Songsでした。

最初にマディ・ウォーターズのアルバムを聴くなら、やはり『ベスト・オブ・マディ・ウォーターズ(The Best Of Muddy Waters)』がお薦め。

まあとにかく、これを聴かなきゃ始まらない。
(by goro)

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