逆襲のブリット・ポップ 〜ブラー『パークライフ』(1994)【最強ロック名盤500】#43

Parklife [12 inch Analog]

⭐️⭐️⭐️⭐️

【最強ロック名盤500】#43
Blur
“Parklife” (1994)

1994年4月は、オアシスがシングル「スーパーソニック」でデビューし、その2週間後にブラーの3rdアルバム『パーク・ライフ』がリリースされた。そして、これが実質的な〈ブリット・ポップ・ムーヴメント〉の幕開けとなった。

〈ブリット・ポップ〉とは、1960年代のブリティッシュ・ビートやモッズ、70年代のグラム・ロック、パンク・ロックなどを手本にした若いバンドたちが続々と出てきたムーヴメントで、音楽以外のカルチャーも巻き込みながら1994年に始まり1997年頃まで続いた。要は、英国らしいポップ要素強めの王道ブリティッシュ・ロックへの回帰と言うべきものだった。

このブラーの『パーク・ライフ』は、英国の市井の人々の生活を歌った、キンクスが60年代後半に発表したコンセプト・アルバムを手本にしたかのような作品だった。

全英5位のヒットシングルとなった’80sエレクトロポップのパロディみたいな「ガールズ&ボーイズ」で幕を開け、キャッチーな「トレイシー・ジャックス」、わたしがいちばん好きな「エンド・オブ・ア・センチュリー」、そしてイジりながらもロンドンへの愛が伝わってくるような「大勢の人々が手に手を取り合って生きていく」という明るくポジティヴなイメージを歌うタイトル曲「パークライフ」へと、立て続けに名曲が続く。ノスタルジックなフレンチ・ポップス風の「トゥー・ジ・エンド」もいい。

頽廃的で虚無的でネガティヴな米オルタナティヴ・ロックの猛威に辟易していた英国リスナーにとって、ブラーのこのアルバムとオアシスの登場はロックシーンの空気をポップでポジティヴなものに一変させ「英国ロックの逆襲」として大歓迎された。

やはり中心的存在が2組いると盛り上がるものだ。どっち派だとか、けなし合ったりとか、リスナーもメディアも、より過熱していく。まあ、わたしはオアシス派だったが、このアルバムだけは好きだ。明るいポジティヴな空気、バラエティに富んだ楽曲、ひねりがありながらキャッチーなソングライティング、ちょうどいい感じのユーモアなど、ブラーの良いところが全部出ている。

アルバムはブラーにとって初の全英1位を獲得し、その年のブリット・アワードではオアシスを抑えてベスト・アルバム賞他、史上最多となる4部門を受賞した。

タイトル曲は全英10位のヒットとなり、その年のブリット・アワードでシングル・オブ・ザ・イヤーとビデオ・オブ・ザ・イヤーを受賞した。サッカーの試合会場で演奏される定番の曲にもなり、ブリット・ポップを象徴する曲となった。

↓ タイトル曲「パークライフ」。コックニー訛りのセリフ部分を担当したのは1979年のイギリス映画『さらば青春の光』で主人公のジミーを演じた俳優フィル・ダニエルズだ。

↓ 全英19位のヒットとなった「エンド・オブ・ア・センチュリー」。本作中ではわたしがいちばん好きな曲だ。

(Goro)

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