セックス・ピストルズ/お前は売女(1977)

Never Mind The Bollocks, Here's The Sex Pistols
【パンク・ロックの快楽】
Sex Pistols – Bodies

一年の締め括りの大晦日に、どえらい曲の紹介で申し訳ない。

ピストルズの曲の中でも、歌詞もサウンドも最もハードなナンバーと言えるだろう。
『勝手にしやがれ』の国内盤CDのブックレットにも、この曲だけ和訳が無く、「割愛させていただきます」とだけ書かれている。

原題の「死体(Bodies)」は、中絶された赤ん坊のことだ。
歌詞には頭のいかれた女の子が不法に中絶し、トイレに捨てられた胎児の死体が「ぼくは排泄物じゃない!ぼくは獣じゃない!」と叫ぶ声が聴こえる、と歌っている。

中絶反対をテーマにした歌とされて「保守的思想の人気曲ランキング」なんかにも選ばれたことがある曲なのだけれど、これは良くない中絶のひとつの例を歌っているだけだろう。実際、彼らの周りには、精神を病んで誰彼構わず寝てしまう女の子がいたという。

ひと口に中絶と言っても、そこに至るまでには様々な事情があるだろう。深く考えずに遊んでみたら出来ちゃって困った、というくだらない理由もあれば、レイプされて妊娠したという深刻な場合だってあるだろう。すべてを同じようには考えられない。

この歌詞を書いたジョニー・ロットンの面白いところは、これを、赤ん坊の立場から歌っているところだ。オレだってひとつ間違えば生まれてなかったのだ、というところで怒りを感じている。大人からはなかなか出て来ない発想だけど、ハタチそこそこの少年だから出来たのだろう。だからこの歌の、ピュアな怒りの爆発に圧倒される。
でも邦題の「お前は売女」は、ちょっと違うように思うな。そういうことを言ってるんじゃないと思う。

1997年の再結成ライヴは、この曲がオープニングだった。わたしも日本武道館で観た。

ありゃもう、最高だったな。

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