異端風の正統派 〜スウェード『スウェード』(1993)【最強ロック名盤500】#39

Suede: Deluxe Edition
⭐️⭐️⭐️⭐️

【最強ロック名盤500】#39
Suede
“Suede” (1993)

当時はそれほどとも思わなかったが、今見るとなかなかのジャケットだな、これは。
大らかな時代だったんだなあ、あの頃は。

1993年3月にリリースされた、スウェードの1stアルバムだ。アルバムジャケットは、彼らの歌の世界観をわかりやすく表してくれている。

たしかにブレット・アンダーソンの書く歌詞の世界は異端のワイルドサイドかもしれないけれど、わたしは当時「久々にイギリスの正統派バンドが出てきたわさ!」と思ったものだった。

ニルヴァーナのブレイクでオルタナティヴ・ロックが一大旋風を巻き起こしている米国とは対照的に当時の英国ロック・シーンは、マンチェスター・ムーヴメントとシューゲイザーの2本立てがどっちも絶賛衰退中で、このスウェードの登場が久々の英国ロックの救世主となったのだった。

英国伝統のポップで艶のあるメロディ、バーナード・バトラーの弾くグラム・ロックのような華のあるギター、スローな曲のダークで耽美的な世界、ザ・スミスのような社会不適合者的内向性を併せ持つ、英国名物のアラカルトみたいなのが出てきたわさ!、という驚きと歓迎だった。

1stシングルとなった衝撃の「ザ・ドラウナーズ」に始まり、「メタル・ミッキー」(全英17位)、「アニマル・ナイトレイト」(同7位)、「ソー・ヤング」(同17位)と本作からシングル・ヒットを連発し、当然ごとく、アルバムは全英1位を獲得した。

「ザ・ドラウナーズ」は兄と弟の近親相おカマの歌だし、「アニマル・ナイトレイト」は父親に性的虐待を受ける少年を描き、「吐き気を催すほどの笑顔で、俺のベッドに招待するとアイツは言った」などと歌われている。

ダークな世界観に反してそのポップでクオリティの高い楽曲は、インディー・バンドにありがちな発展途上の未完成さや反商業主義的なわかりにくさがなく、逆にあっけらかんとポップな開放感を感じさせるものだった。

そんな彼らの登場が、後にやってくる「ブリット・ポップ」という新たなムーヴメントの扉を開いたのだ。

↓ 全英17位のヒットとなった2ndシングル「メタル・ミッキー」。

↓ 全英7位と初のトップ10入りを果たした3rdシングル「アニマル・ナイトレイト」。

(Goro)

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