シンディ・ローパー/マネー・チェンジズ・エヴリシング(1983)

She's So Unusual

【カバーの快楽】
Cyndi Lauper – Money Changes Everything

シンディ・ローパーの名盤1stアルバム『シーズ・ソー・アンユージュアル(She’s So Unusual)』のオープニング・トラック。

貧しい地域に住むたいして美人とも言えない女の子が、寄せ集めの古着をド派手にリメイクして身を包み、水たまりなんか気にもしないで路上で踊る、自由で型にはまらない誰よりも輝いてる女の子、という物語が一瞬で伝わるようなカッコいいアルバム・ジャケットだ。

シンディが体現する「女の子だって楽しみたい!」という新しい時代の女性像を象徴し、いかにも80年代風な電子楽器を盛り込んだサウンドも当時はまだ新鮮だったうえに、名曲揃いのアルバムだった。

実人生でも職を転々とし、一度バンドとしてデビューしたものの失敗に終わり、借金を抱えて自己破産したシンディ・ローパーは、30歳にしてアメリカン・ドリームを掴み、時代を象徴するポップ・アイコンとなった。

「わたしたちは今日でお別れよ。たしかに永遠の愛を誓ったけれど、あのときは考えてなかったことがあったの。それはお金のこと。お金はすべてを変えるのよ」

この曲はそんな、金の切れ目は縁の切れ目的なえらく率直なラヴソングで、いかにもシンディ・ローパーらしいと言えるが、当時は知らずに聴いていたけれど、実はこの曲はオリジナルではなく、カバーだったのだ。

原曲は米ジョージア州出身のニューウェイヴ・バンド、ザ・ブレインズ(The Brains)で、リード・ヴォーカル兼キーボードを務めるトム・グレイの作だ。彼らが1980年に発表した1stアルバムに収録されている。

粗削りなオリジナルも嫌いじゃないが、でもやっぱりあの四角い口で歌うシンディのバージョンは個性の輝きが圧倒的だ。
バックバンドを務めたザ・フーターズによる、バンド・サウンドと上手く融合した厚い音のシンセによるイントロは、新時代のポップスの幕開けを感じさせたものだった。まるですべてを肯定するようなこの輝かしいイントロを聴くと、一気にあの時代に連れ戻される気分になる。

わたしはたったの17歳で、職を転々としながら、考えてるのは「モテたいなあ」ということだけ。
そんなやつがモテるわけないわな。

↓ ザ・ブレインズのオリジナル。

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