岡林信康【名曲ベストテン】NOBUYASU OKABAYASHI Greatest 10 Songs

岡林信康ライブ 中津川フォークジャンボリー(通常プラケース仕様)

岡林信康と言えば、1960年代末から70年代初頭にかけての日本のフォーク・ブームの中心人物であり、象徴である。彼は「フォークの神様」と呼ばれた。

さらに、わたしは彼を日本語ロックの開祖のひとりだと思っている。

ボブ・ディランを手本にして、はっぴいえんどなどに手伝ってもらいながら、日本語で歌えるロックのスタイルを模索した人であり、日本語ロック草創期に多くの名曲を残した。

最初期の弾き語りスタイルのフォークの神様時代が好きな人には申し訳ないが、わたしはバンドを従えてからの楽曲のほうに好きな曲が多い。

このベストテンで取り上げた岡林の特に初期作品は、いつの時代にも通用する普遍的な内容の歌ばかりでないのはたしかだ。あの時代だからこそ熱狂的に支持された歌や、今の時代の若者が聴けば、ちょっと理解できないなと思う歌もあるだろう。なにしろ50年も前の歌なのだから。

岡林本人が何かで言っていたように、彼の歌が当時のいわゆる歌謡曲や流行歌などと決定的に違ったのは、彼の歌が「ノンフィクション」であったことだ。
若者らしい青臭い考えのものもあったにしろ、彼が作った歌に込められたのは、そのときどきに彼が真摯に問題意識を持って考えた事や、心の内側の吐露だった。
それは若者らしい真っ直ぐな情熱とともに、虚栄や、誤謬や、迷いなども記録された、真に人間味あふれる興味深い「歌」にも聴こえる。

彼の歌からにじみ出る若者らしい熱い想いや苦悩は、今の若者たちにもなにかしら心に響くものがあるのではないかと思う。
そして、日本語ロックの開祖としての功績を知る意味でも聴いてもらえたらな、と思う。
音楽的な完成度はどうあれ、岡林信康以前に、これほど若者の魂の叫びを熱く歌った歌はこの国にはなかったのだ。

以下は、わたしが愛する、岡林信康の至極の名曲ベストテンです。

第10位 堕ちた鳥のバラード(1971)
作詞:佐藤信 作曲:岡林信康 編曲:柳田ヒロ

1971年に発表された3rdアルバム『俺らいちぬけた』の冒頭を飾る曲。暗殺の様子が描かれる歌詞と不穏なメロディー、ロック風のアレンジがカッコいい曲だ。
作詞は劇作家の佐藤信という人で、今回選んだ10曲のうち岡林以外の人が歌詞を書いてるのはこの曲だけである。わたしは岡林のアルバムではこの3rdアルバムがいちばん好きかな。

※残念ながらこの曲は、YouTube動画がありませんでした。

第9位 流れ者(1969)
作詞・作曲:岡林信康 編曲:西岡たかし

岡林が日雇い労働者として建築現場で働いていた頃に作った歌だ。
日雇いの肉体労働者の過酷な現実を歌った歌としては、2ndシングルとして発売されて彼の歌としては最も売れた「山谷ブルース」のほうが有名ではあるが、その続編のように3rdシングルとして発表されたこの曲のほうがわたしはメロディも歌詞も好きだった。
ビルや道路や住宅など、この国とそこに住む人々にとってなによりも重要なものを造っている人々が、住所不定で一生建築現場を渡り歩く人生だなんて、とショックを受けたものだった。

第8位 愛する人へ(1970)
作詞・作曲:岡林信康 編曲:はっぴいえんど

2ndアルバム『見る前に跳べ』のオープニング・トラック。
岡林が書いた初めてのラヴソングで、別れた恋人に対し、「君を思い通りにしようとしたけど、ならなかったから捨ててしまった」と告白し、「もう新しい恋人が出来たから今度は気を付けよう」と歌う、なんともリアリティのあるラヴソングだ。まさに「ノンフィクション」歌手・岡林の本領発揮である。

「愛する人へ」の歌詞はこちら

第7位 申し訳ないが気分がいい(1971)
作詞・作曲:岡林信康 編曲:柳田ヒロ

3rdアルバム『俺らいちぬけた』のラストを飾る曲。
山や川や鳥に囲まれ、自然の中で生きるんだ、ここで本当の自分を見つけたんだ、と歌う歌。歌詞はなんだかまだ迷っている途中みたいに思えなくもないが、曲もアレンジも完成度が高い。

第6位 家は出たけれど(1971)
作詞・作曲:岡林信康 編曲:はっぴいえんど

アルバム未収録のシングルで、バックの演奏ははっぴいえんどだ。ロック色の強い楽曲になっている。
親に逆らって家を飛び出し、勢いで学校もやめたものの、母親に男が出来、彼女にも捨てられ、結局ひとりぼっちになっただけという若者の話がリアルで面白い。
まるで当時の十代のわたしのことが歌われているみたいで、自虐的に愛した曲だった。

「家は出たけれど」の歌詞はこちら

第5位 俺らいちぬけた(1971)
作詞・作曲:岡林信康 編曲:柳田ヒロ

3rdアルバム『俺らいちぬけた』のタイトル曲。
田舎が嫌だったから都会に出て来たけど、やっぱりここでは生きられないと悟り、山村の自然の中で暮らしていこうと、決意を語る曲。
都会でフォーク・ソングに出会って、ちょっと背伸びしてみたりウケを狙って歌ってみただけなのに、ガチ勢からフォークの神様、反体制運動の象徴に祀り上げられてしまって、いろいろ苦しかったんだろうな、怖かったんだろうな、逃げたかったんだろうなと思う。わたしだったら怖いもの、やっぱり。

「俺らいちぬけた」の歌詞はこちら

第4位 手紙(1970)
作詞:中島一子・岡林信康 作曲:岡林信康

1stアルバム『わたしを断罪せよ』収録曲。部落差別の問題を真っ正面から歌った歌で、長いあいだ放送局が自主規制してきた曲だった。
中島一子という被差別部落出身の女性の遺書を元に作詞されたという。
わたしは初期の弾き語りスタイルの曲の中では一番好きな曲だ。

「手紙」の過去記事はこちら

第3位 今日をこえて(1970)
作詞・作曲:岡林信康

1stアルバム『わたしを断罪せよ』のオープニング・トラック。この曲こそ、メロディといい歌詞といい、サウンドはギリギリだけど、最初の日本語ロックの名曲のひとつなんじゃないかとわたしは思っている。
なぜか1番を2回繰り返し、2番も2回繰り返すという不思議な構成で、6分という演奏時間も長すぎるとは思うけれども、そういうのも含めて全体的にボブ・ディランの影響なのだろう。

「今日をこえて」の過去記事はこちら

第2位 自由への長い旅(1970)
作詞・作曲:岡林信康

2ndアルバム『見る前に跳べ』収録曲。
政治意識高い系の学生が幅を利かせた時代に、彼らが共感するようなプロテスト・ソングを歌ったものの、共感を通り越して神格化されてしまい、「自由」のために歌ってきたはずだったのに、逆にその重圧が彼をどんどん縛り付け、追い込んでしまった。
この曲はそんな自分をもう一度見つめ直し、「いつの間にかわたしが、わたしでないような」と歌い始める歌だ。
若い頃にありがちな、信じたり、間違ったりを繰り返して、迷路をさまようような不安な気分がにじみ出ている、その意味でリアリティのある名曲だと思う。

「自由への長い旅」の過去記事はこちら

第1位 私たちの望むものは(1970)
作詞・作曲:岡林信康

初期の岡林信康を象徴する代表曲。
この曲では、それまでは外の世界に対して批判の目を向けてきた若者が、あらためて自分の内面に批判の眼差しを向けた曲だ。
そのためメッセージは単純でなくなり、歌詞の前半と後半で、真逆のことが歌われるという、深い意味を持った曲になる。
ひとりの若者が「わたしたちの望むものは」と考えれば考えるほど、正義も悪も、理想も現実も、社会と個人の関係も、言うほど単純なものではないということにぶちあたって苦悩し、そして現状を打破しようともがいているように聴こえるのがこの曲の魅力ではないかなと思う。

「私たちの望むもの」の過去記事はこちら

入門用の岡林信康のアルバムとしては、適当なベスト盤が無いので、『岡林信康URCシングル集 +8』を薦めておく。最初に聴くべき代表曲はほぼ網羅されています。

選んだ10曲がぶっ続けで聴けるプレイリストを作成しましたので、ご利用ください。

♪プレイリスト⇒岡林信康【名曲ベストテン】はこちら

また、apple musicのプレイリストとしても作成済みです。
apple musicをご利用の方はこちらのリンクからプレイリストにジャンプできます。

岡林信康【名曲ベストテン】OKABAYASHI NOBUYASU Greatest 10 Songs (goromusic.com)

ぜひお楽しみください。
(by goro)

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