【ディランのアルバム全部聴いてみた】『ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム』(1965)

ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム(紙ジャケット仕様)

【ディランのアルバム全部聴いてみた 5枚目】
“Bringing It All Back Home”

とりあえずA面だけとはいえ、ディランがバンドをつけ、フォークからロックへと転身した記念すべき名盤。ロック史上最初の「フォーク・ロック」のアルバムとなり、全米6位、全英1位と、過去最高位を記録する大ヒットとなった。ディラン23歳のアルバムだ。

この転身が「商業主義に魂を売った」と、フォークを偏愛するファンたちに猛批判を受けたのは有名な話だ。
また、ライヴでは当時のPAの性能が悪すぎて、バンドと演奏するとディランの歌が聴こえなくなってしまったということもあり、盛大なブーイングにディランが涙目で退場するという場面もあった。

ディランのファンと言いながら、プロテスト・ソングを歌わなくなれば批判し、ロック・サウンドを取り入れれば批判し、後にはカントリーを歌っても批判した。つくづく面倒くさい連中だ。
変化を拒み、表現の幅を拡げることを憎むなど、とてもディランのファンとは思えない。いったいディランのなにを聴いていたのかと思う。

このアルバムは名曲が揃っていて、若い頃は最も好きなアルバムのひとつだった。
チャック・ベリーの「トゥー・マッチ・モンキー・ビジネス」のリフを使ったというオープニングの「サブタレニアン・ホームシック・ブルース」は全米39位と、ディランにとって初のTOP40入りとなるヒット曲だった。
ロックンロールのようでもあればトーキング・ブルースのようでもあり、今思えばラップのようでもある、とにかく画期的な曲だった。そしてこのめちゃカッコいいPVは、ロック史上初のPVとも言われている。

「ミスター・タンブリンマン」は、このアルバムが発表されてからわずか3週間後にバーズがカバーして全米1位になったし、他にも「マギーズ・ファーム」「ラヴ・マイナス・ゼロ」「イッツ・オール・オーバー・ナウ、ベイビー・ブルー」など名曲が並ぶ、充実したアルバムだ。
ここからの3作ぐらいがディランの第1期黄金時代と言えるだろう。

ちなみに、ジャケットに写っている赤いドレスの美人は、ディランがまた新たな彼女を自慢げに披露しているのではなくて、当時のディランのマネージャーの奥様なのだそうな。

↓ 「サブタレニアン・ホームシック・ブルース(Subterranean Homesick Blues)」

↓ 「ミスター・タンブリン・マン(Mr. Tambourine Man)」

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