ザ・スタイル・カウンシル/ユーアー・ザ・ベスト・シング(1984)

カフェ・ブリュ

【80年代ロックの快楽】
The Style Council – You’re the Best Thing

わたしが若い頃、同じパンク好きとジャムの話で盛り上がったりすると、その後で恐る恐るという感じで「ところで…スタイル・カウンシルって好き?」「いやあ…スタカンはちょっと…」「だよね~…」というお決まりの会話を交わしたものだった。

当時の若いわたしには、スタカンはやけにお洒落で、ブルジョワ的で、非ロック的に聴こえたものだったのだ。

きっと当時のわたしは、音楽に勢いと刺激とカタルシスしか求めていない、フラストレーションで満タンのクソガキだったからだと思う。毎日三食激辛ラーメンを求めていたようなものだ。

ポール・ウェラーは18歳のときに、ザ・ジャムというバンドで「この街で輝いているのは25歳以下の若者だけ」と歌った。
そして彼自身が25歳になると、ジャムを解散し、スタイル・カウンシルを結成した。きっと25歳を過ぎても輝くために、音楽の壁を打ち破ったのだろう。怒れるモッズ少年が、その熱い魂はそのままに、一流の音楽家へと成長したのだ。

今ならわたしもこのスタイル・カウンシルの1stアルバム『カフェ・ブリュ』の面白さ、素晴らしさがよくわかる。

R&B、ソウル、ジャズ、ゴスペル、ボサノヴァ、フレンチ・ポップスなど、幅広く豊かな音楽性が見事に調和し、美しい名曲に彩られたこのアルバムは、まるでビートルズの『サージェント・ペパーズ』に比肩するようなコンセプト・アルバムの傑作にも聴こえる。
わたしも30数年かけて少しは成長し、彩り豊かな山海の幸を楽しむ高級料亭の味が多少はわかるようになった気分だ。激辛ラーメンもまあ、いまだに好きだけれども。

この曲はアルバムからシングル・カットされて全英5位のヒットとなった名曲。
「きみは最高だ」と歌う歌だが、その言葉をそっくりあなたに返したいよポール、と言いたくなるほどカッコいい曲だ。

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