レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン/マギーズ・ファーム(2000)

Renegades

【カバーの快楽】
Rage Against the Machine – Maggie’s farm

レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンが2000年にリリースした、4枚目にして最後のアルバム『レネゲイズ(Renegades)』は全曲カバーのアルバムだ。この曲もそこに収められている。

レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンを知らない人たちのために簡単に説明しておくと、彼らはL.A.出身で、ハード・ロックとヒップ・ホップが融合したようなゴリッゴリにラウドなサウンド、ライヴでは星条旗を逆さに吊るし、チェ・ゲバラの肖像を掲げ、歌の内容はアジテーションみたいな反体制的プロテスト・ソングだ。デビュー・アルバムのジャケットは1963年にベトナムの僧侶が南ベトナム政府の仏教への弾圧に対して抗議の焼身自殺をした衝撃的な写真が使われている。ロック界きっての過激派と言えるだろう。

このカバー・アルバムには他に、MC5やストゥージズ、ディーヴォ、サイプレス・ヒル、スプリングスティーン、ローリング・ストーンズなどのカバーも収められている。ちなみにストーンズのカバーは「ストリート・ファイティングマン」という、いかにもレイジらしい選曲だ。

この「マギーズ・ファーム」の原曲はボブ・ディランの1965年のアルバム『ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム』に収録されている。ライヴでもよく歌われていた曲だ。
「もうマギーの農場では働きたくない」と歌う、ユーモアで包みながらではあるけれども、これも労働者と雇い主との対立を歌った、プロテスト・ソングと言えるだろう。

これをレイジらしいゴリッゴリのハードなサウンドでカバーしている。
彼らは当時流行の〈ラウド・ロック〉と呼ばれた、わたしが苦手とするやけに肉体的でやたらと音圧の強いムキムキ勢に分類されがちだったし、左翼的な思想にもとくに共感することもないけれども、レイジのサウンドはちょっと面白いと思っている。

なんなくだけど、ムキムキでうるさいだけじゃなくて音楽的なところもあるし、ギターは変態の芳しい香りもするし、全体に潔くてカッコいい音だ。このカバー・アルバムの選曲にしてもわたしの好きなアーティストが多く、ああやっぱりそうなのね、という感じである。

このカバーも結構好きだな。

↓ ボブ・ディランのオリジナル。