スコセッシとデ・ニーロ、そしてディカプリオ【死ぬまでにもう一度見たい映画を考える】その9

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昭和も終わりに近づいた頃、世間の普及速度よりだいぶ遅く、やっとのことでVHSビデオデッキを自室に導入した二十代前半のわたしは、原付スクーターで1時間以内の範囲のレンタルビデオ店を片っ端から覗いては過去の名作を探し、会員カードを作ったものだ。

最初にレンタルしたビデオが『タクシードライバー』(’76)だったことまで憶えている。それはもう、ビデオデッキを手に入れたら最初に見るのは絶対にこれだと決めていたのである。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』などを観て好きになっていたロバート・デ・ニーロの代表作と聞いていて、見たくてたまらなかったのだ。

タクシードライバー の映画情報 - Yahoo!映画

いざ見てみるとそれは予想を上回る衝撃だった。主人公の壊れっぷりは異様なほどリアルだし、映画はまるで予測がつかない行き当たりばったりみたいな展開なのに、ちゃんとした映像とリアリティのおかげなのか、説得力をもって成立していた。それでデ・ニーロだけじゃなく、監督のマーティン・スコセッシも気になり始めた。
スコセッシ&デ・ニーロのWブレイク作となったこの『タクシードライバー』は、すでに3回は見ているが、きっとそのうちまた見たくなるだろう。

わたしはもっとこんな狂った映画が見たい、と思っていろいろ調べていると、その『タクシードライバー』という作品が、1960年代末~70年代にかけて〈アメリカン・ニューシネマ〉と呼ばれた作品群のその末期に位置する作品だと知ったのだった。

〈アメリカン・ニューシネマ〉は、ハリウッドの王道エンターテインメント映画とは違う、ベトナム戦争やドロップアウト文化を背景に、反骨心旺盛な若者たちによって作られた、トガった作品、狂った作品の宝庫だった。当時のトガり狂ったわたしはそれらを探してビデオレンタル店を巡ったわけだが、そんな青春の〈アメリカン・ニューシネマ〉については次回まとめて書くことにしよう。

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スコセッシ&デ・ニーロの黄金コンビの作品はどれも傑作だが、その最初の作品、ハーヴェイ・カイテルとデ・ニーロがダメヤクザとクズ男を演じたあの素晴らしい『ミーン・ストリート』(’73)まで遡ってもう一度製作順に見直してみたいものだ。

わたしの苦手なライザ・ミネリとデ・ニーロの共演となった『ニューヨーク・ニューヨーク』(’77)はわたしの苦手なミュージカルだが、それでもスコセッシらしさ、デ・ニーロらしさは感じられた。まあそれもいいがやはりデ・ニーロが実在のボクサーを演じてアカデミー主演男優賞を受賞した『レイジング・ブル』(‘80)のほうがもっと好きだ。

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83年公開の『キング・オブ・コメディ』も評価は高いが、それよりNYマフィアを描いた『グッドフェローズ』(’90)は、デ・ニーロ、レイ・リオッタ、ジョー・ペシというシビれる3人を主演に据え、60~70年代のクラシック・ロックをふんだんに使い、しかも実話という(わたしは実話映画が好きだ)、まったくわたし好みのこの作品は、スコセッシ監督の最高傑作に数えられていい傑作だ。

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そしてその次の、デ・ニーロ&ジョー・ペシを再び共演させてラスベガスの賭博師やマフィアの暗躍を描いた『カジノ』(’95)も絶対に外せない傑作だ。原作が『グッドフェローズ』と同じ作者ということもありテイストが似ているが、人間がより深く繊細に描かれている気がして、その激しくもせつない栄枯盛衰の人間模様に、3時間どっぷり浸れる。まったく長く感じない。

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近作ではデ・ニーロとアル・パチーノが共演した『アイリッシュマン』(’19)があるが、Netflix限定公開なので、契約していないわたしは見ることができない。なんてことしやがる。

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レオナルド・ディカプリオとキャメロン・ディアスが共演し、1863年のニューヨークにおけるマフィアの抗争を描いた2002年の『ギャング・オブ・ニューヨーク』以降、スコセッシはデ・ニーロに替わってディカプリオを主演に据えることが多くなる。彼も良い役者だ。

実業家のハワード・ヒューズの生涯を描いた『アビエイター』(’04)、精神病の犯罪者を収容する島を舞台にしたミステリー『シャッター・アイランド』(’09)も良かったが、もう一度見たいとなるとやはりアカデミー作品賞、監督賞などを受賞してスコセッシの代表作となった『ディパーテッド』(’06)だ。

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ギャング組織に潜入した警察官と、警察官になったギャングの二人が主人公という、設定を聞いただけでもワクワクする物語は、アンドリュー・ラウ監督の香港映画『インファナル・アフェア』(’02)のリメイクだ。オリジナルももちろん傑作で、三部作となったが、いつかこっちの3作もぶっ続けで見てみたいものだ。

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さらにもうひとつ、ウォール街の実在の株式ブローカーの栄華と凋落をハレンチ極まりない描写も交えながら描いた『ウルフ・オブ・ウォール・ストリート』(’13)も傑作だった。もう一度見たい作品だ。ウルフ・オブ・ウォールストリート (字幕版)

20代のときにドキュメンタリー音楽映画『ウッドストック/愛と平和と音楽の三日間』(’70)の編集も担当したスコセッシは、もともとロックが好きな人らしく、音楽映画を撮らせたら右に出る者はいないと思われる。

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ザ・バンドの解散コンサートを記録した『ラスト・ワルツ』(’78)は音楽映画としては抜きん出た完成度の作品だったし、60年代のボブ・ディランのフィルムで構成された『ボブ・ディラン ノー・ディレクション・ホーム』(’05)や、ローリング・ストーンズのライヴ・ドキュメンタリー『シャイン・ア・ライト』(’08)なども出色の出来だった。どれもロック・ミュージシャンとその音楽に対する深い敬意と愛情が感じられる作品だ。

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そういえば2023年公開予定のスコセッシ監督による最新作、禁酒法時代の犯罪映画『キラーズ・オブ・ザ・フラワー・ムーン』にはデ・ニーロとディカプリオの両方が出ているらしい。これは絶対に観なきゃ。