【きょうの余談】独りトリキでストーンズを読む夜

昨夜、焼き鳥が食べたくなって、近くのトリキへ行って独り飲みした。友人と飲むのももちろん楽しいが、独りでゆっくり本(電子書籍だけど)でも読みながら、好きなものを食べて飲んでと過ごすのはわたしにとって贅沢で幸福な時間だ。

生ビール、みたれ(もも)、手羽先、冷やしトマト、メガレモンサワー、ハツ、鶏レバニラ串、鶏雑炊と、順番に注文する。

美味い焼き鳥をむさぼりながら読んだのはストーンズにまつわる本『アンダー・ゼア・サム』だ。

米ブルックリン出身で、10歳でストーンズに夢中になり、16歳でストーンズにまつわるニュースを報じるファン・マガジン〈べガーズ・バンケット〉を立ち上げ、その後17年に渡ってたった独りで発行を続けた米国人ジャーナリスト、ビル・ジャーマンが書いた本だ。

アンダー・ゼア・サム ブルックリンの青年が覗いたローリング・ストーンズの奥座敷 (リットーミュージック)

彼はやがてストーンズのメンバー(と言っても主にキースとロン・ウッドだが)とプライベートでも親交を深めるまでになり、この本ではバックステージやプライベートのメンバーのリアルな姿を書き綴っている。

これが文章の面白さも相まって、めっぽう面白い。

フランクで心優しい兄貴のようなキースは、著者をストーンズの奥座敷まで招待してくれる頼れる存在だが白い粉に目がないし、ウッディは何があっても先輩優先で自分を殺し、時には発達障害みたいに一人じゃ何もできなくなるし、ミックはあるときは皇帝のように振る舞い、あるときは著者が絨毯にこぼしたジュースを床に這いつくばって拭いてくれ、あるときは記事の内容に激怒して詰め寄る、多重人格のようにご機嫌の変貌ぶりが激しく周囲を戦々恐々とさせているし、チャーリーはすぐ側にいる著者にいつだってまったくの無関心だ。他にも、事務所を支配する女帝や、バンドに帯同してブツを手配する怪しげな取り巻きたちや、著者の前に立ちはだかる融通の効かないセキュリティスタッフや物販業者など、ストーンズを囲む人々が生々しく描かれている。

翻訳も各々の話し方などまで上手く書き分け、あまりにリアルで引き込まれるので、この本を読んでる間じゅう、ずっとストーンズのツアーに一緒に付いて行ったり、彼らの家を訪ねたりしているような楽しい気分にさせてくれるのだ。

笑えるエピソードや気の毒なエピソード、驚くような裏話などが満載だが、わたしがとくに驚いたのは、90年に初来日したときにも御一行様はやっぱりどうにかして白い粉を入手したというエピソードだ。
飛行機で持ち込めるわけもなく、日本でそんなツテもないのに、危ない橋を渡りながら何とか海外から調達するその執念は凄いが、しかしもし捕ま流ようなことでもあったら、あの東京ドームの10daysをわれわれは見ることができなかっただろうし、きっと二度と来日もできなかっただろう。いい大人のくせして少しぐらい我慢できないのかよ、などと読みながら思ったものだ。

もう本も終わりの方だったので、締めの鶏雑炊を食べる頃には読み終えた。
これまでストーンズに関する本はいろいろ読んだけれども、これはダントツでいちばん面白かった。

もちろん焼き鳥も、どれもこれも美味いし、最高に贅沢な夜だ😋

会計は2,880円也。

トリキと言えば以前は280円均一の店だったけれども、今は360円均一だ。それでもまあ安いけれども。もっと高くてちっとも美味しくない店は世の中に山ほどある。トリキはわれわれ底辺職労働者の憩いの場だ。まさに、Beggars Banquet(貧者の宴)。

でも、トリキも大変だろうな。

物価ばっかり上がって。

給料は上がらないのに。

底辺労働者に乾杯。

地の塩に乾杯だ。

(Goro)

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