ザ・ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス『アー・ユー・エクスペリエンスト』(1967)【わたしが選ぶ!最強ロック名盤500】#110

ARE YOU EXPERIENCED [12 inch Analog]

⭐️⭐️⭐️⭐️

【最強ロック名盤500】#110
The Jimi Hendrix Experience
“Are You Experienced” (1967)

わたしの娘が中学生ぐらいの頃だったか、「ギターがいちばんうまい人はだれ? 布袋さん?」と訊いてきたことがあった。

わたしは「バカなことぬかすな、ジミ・ヘンドリックスだ。覚えておけ」と厳しく説教したものだった。

エリック・クラプトンは「誰もジミのようには弾けない」と言った。
ジェフ・ベックはジミの演奏を聴いて、真剣に廃業を考えたという。

いやしかし実際のところ、ジミヘンのギターはうまいとかどうこうの次元ではないのだ。
エレキギターで新しい世界観を呈示したようなものだ。

異常なまでに音を歪ませ、アンプから放射されるノイズのすべてを使って過激な音楽を創造したのだ。天才的な頭脳と科学の力で、恐るべき怪物を作り出したフランケンシュタイン博士のように。

『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコ』の記事で彼らの登場の意義を「それまでワンフロアだった〈ロック〉という音楽に新たに地下フロアができたようなものだ。ロックの増床である」と書いたが、ジミヘンの登場はロックに「別館」がオープンしたようなものだ。この別館には後にハード・ロックやヘヴィ・メタル、あるいはノイズ・ロックなどのテナントがひしめくことになる。

これはそのジミ・ヘンドリックスが1967年5月に発表した、衝撃の1stアルバムである。カバー曲なしの、全曲ジミのオリジナルである。

【オリジナルLP収録曲】

SIDE A

1 フォクシー・レディ
2 マニック・デプレッション
3 レッド・ハウス
4 キャン・ユー・シー・ミー
5 ラヴ・オア・コンフュージョン
6 今日を生きられない

SIDE B

1 メイ・ディス・ビー・ラヴ
2 ファイア
3 サード・ストーン・フロム・ザ・サン
4 リメンバー
5 アー・ユー・エクスペリエンスト?

とはいえ、ジミの怪物的な音楽を、当時の発展途上の録音機材でレコードという小さな枠に収めるのは困難だったに違いない。レコードから聴こえてくるのは、ジミの音楽の片鱗にしかすぎないようにも思えてしまう。

それでも充分に楽しめるが。

話は変わるが、その昔「王様」という、洋楽ロックを直訳の日本語でカバーするというミュージシャンがいて、ロック好きの界隈では一世を風靡したものだ。1996年頃の話である。

その王様によるカバーでわたしが最初に衝撃を受けたのが、本作のオープニングに収められている「フォクシー・レディ」で、直訳タイトルは「狐っぽい女」だった。

おまえはかわいい 恋の壊し屋さん(キツネっぽ〜い)
おまえはやさしい 恋の作り屋さん(キツネっぽ〜い)
家に連れて帰りたい 悪さはしないから
おれの女になってくれ キツネっぽ〜い
(詞・曲:ジミ・ヘンドリックス 日本語詞:王様)

これを聴いて爆笑すると同時に、「ジミヘンてギターは凄いけど、大したことは歌ってねーな」と思ったものだ。そして薄々わかってはいたが、「そもそも洋楽ロックってたいしたこと歌ってねーよな」とあらためて思ったものだ。

王様を聴いた誰もが、きっとそう思ったに違いない。それは過剰に往年の洋楽ロックを崇め奉る風潮を終わらせ、親近感を感じながら「これなら歌詞なんかわからなくても問題ないなー」と、より気軽に洋楽を楽しめるようになった気がする。

ジミ・ヘンドリックスが何を歌っているかなんてそれ以上調べてみたことなどないが、正直、どうでもいいのである。これは洋楽を聴かない人には理解できない感覚かもしれないが、歌っていることがわからなくても、本当に何も問題ないのである。

そしてあらためてジミヘンのオリジナルで聴く「フォクシー・レディ」は、一点の曇りもなく、やっぱりカッコいいのである。

↓ ジミヘンの代表曲のひとつとして知られる「フォクシー・レディ」。
なんか知らんが、歌の合間にジミがやたら「ハハッ」などと笑う不真面目な態度がまたいい。きっとラリっているのだろう。

↓ レッチリやアリス・クーパーなど、カバーも多い人気曲「ファイア」。

↓ 1996年2月リリースの王様の1stフルアルバム『王様の恩返し』に収録された「キツネっぽい女」。アルバムはオリコン8位のヒットとなった。演奏の完コピ具合も話題に。

(Goro)

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