モビー・グレイプ『モビー・グレイプ』(1967)【わたしが選ぶ!最強ロック名盤500】#112

モビー・グレープ

⭐️⭐️⭐️

【最強ロック名盤500】#112
Moby Grape
“Moby Grape” (1967)

1966年にサンフランシスコで結成されたバンド、モビー・グレイプは、その先進性と豊かな才能で当時のアメリカン・ロックの頂点に君臨するはずのバンドだった。
しかし彼らを取り巻く大人たちのばかばかしいアイデアや重なり続けるトラブルによって、その光り輝く才能と可能性のすべてをドブに捨てられた悲劇のバンドとなった。

5人のメンバー全員が曲を書き、各々が自作曲でヴォーカルをとり、その音楽性はロックンロールからブルース、フォーク、ジャズ、カントリーと幅広く、サウンド面でも、ツイン・ギターでのバトルが繰り広げられたり、ファンキーなベースを前面に押し出したりと、当時としては画期的な、米ロックシーンの最先端をいくものだった。

サンフランシスコ随一の実力派バンドとして同業者の間でも評判となり、レコード会社の争奪戦が繰り広げられた。そして勝ち取ったのがコロムビアレコードだった。

本作はそのコロムビアから1967年6月にリリースされた、彼らの1stアルバムである。

しかしコロムビアが彼らを大々的に売り出すために投入したアイデアは、すべて裏目に出た。

新人としては異例の、大勢の記者を招いた大々的なお披露目パーティーが行われたが、ロックバンドらしからぬ商業的な売り出し方と捉えられて不評と反発を買った。
さらに、5枚同時にシングルを発売するという前代未聞の試みも、ラジオのエアプレイが分散し、結局どれもヒットしないという大失敗に終わった。

さらにジャケット前列のドラマーが中指を立てているように見えるとか、背後の星条旗が赤く染められていることなどが問題になり、販売店からレコードを回収し、ジャケットを差し替えて再発、などというドタバタも売り上げの不振に大きく影響した。

【オリジナルLP収録曲】

SIDE A

1. Hey Grandma
2. Mr. Blues
3. Fall on You
4. 8:05
5. Come in the Morning
6. Omaha
7. Naked, If I Want To

SIDE B

1. Someday
2. Ain’t No Use
3. Sitting by the Window
4. Changes
5. Lazy Me
6. Indifference

空間を切り裂くような切れ味の鋭いギターがシビれるA1「Hey Grandma」のキャッチーなオープニングでいきなり期待が膨らむ。A6「Omaha」は疾走感あふれるロックンロールで攻撃的なベースもカッコいい。他にもアコースティック・ナンバーや息の合ったコーラスもあり、飽きさせない。当時のアメリカン・ロックにはなかった疾走感というか、性急感も彼らの持ち味だ。

レコード会社が余計なことをせず、さまざまなトラブルもなければ、彼らはバッファロー・スプリングフィールドよりも先に新時代のアメリカン・ロックを代表するバンドになっていたかもしれなかった。

しかしその後もメンバーの麻薬の濫用、精神疾患、未成年者との交際、悪徳マネージャーとの法廷闘争など混乱は続き、2ndでは巻き返しを焦るレコード会社がレコーディングに介入して無理矢理サイケデリック風にアレンジしたが当然の如く失敗、メンバーは続々と脱退し、60年代の終わりと共に、彼らが手にするはずだった成功と栄光は何ひとつ得られないまま、解散してしまった。

ちなみに細野晴臣は、大学在学中に組んだバンドでギターからベースへと持ち替えたが、その折に影響を受けたのがこのモビー・グレープのベーシスト、ボブ・モズレーだったという。
また、映像の情報など無い時代であり、それまでギターと同じようにピックで弾いていたのを、モビー・グレープの2ndの裏ジャケットでモズレーがベースを指で弾いている写真を見て、指で弾くことも知ったという。

↓ オープニングを飾る「Hey Grandma」は、リード・ギターのジェリー・ミラーとドラマーのドン・スティーヴソンによる共作。

↓ 代表曲のひとつとして知られる「Omaha」はリード・ヴォーカル&ギターのスキップ・スペンスの作だ。

(Goro)

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