≪オールタイム・グレイテスト・ソング 500≫ その187
Nick Cave & Bad Seeds The Ship Song
ニック・ケイヴはオーストラリア出身のシンガーソングライターだ。
80年代前半には暗黒前衛系のバンド≪ザ・バースディ・パーティ≫で、原始的なリズムとノイズと咆哮と打撃音と狂乱の、それはもう恐い恐い音楽をやっていた。
ソロになっても初めは暗黒で尖ってギザギザしていたが、その後ヘロイン中毒になってブラジルで長期間療養し、たぶん人生を見つめなおすかなにかして、この曲の入った名盤『ザ・グッド・サン』で奇跡の生還を果たす。
暗黒もギザギサもやめて突然≪歌≫に目覚めたかのような、古典的でメロディアスな作風に一変したが、これが地獄から生還した男にとっての真摯な音楽であり、生き方なのだろう。
シップ・ソングだから「舟唄」だけど、カッコつけず、奇を衒ったりせず、ムリに新しさを追ったりもしていない、シンプルで純粋で美しい歌だ。八代亜紀のほうにも決してひけをとっていないと思う。
この時代のわたしにとっての≪夜の音楽≫だった。
このアルバムを当時はよくベッドで眠る前に聴いたものだった。