エルヴィス・プレスリー/ハートブレイク・ホテル (1956)【’50s Rock Masterpiece】

Music-versary: Elvis' Heartbreak Hotel was released on January 27, 1956 | SiriusXM

【50年代ロックの名曲】
Elvis Presley
Heartbreak Hotel (1956)

メンフィスのインディ・レーベル、サン・レコードから数枚のシングルを出したのち、メジャーのRCAに移籍したエルヴィスは、1956年1月にこの曲を録音した。
今の言い方で言えばメジャー・デビュー第1弾シングルとして発売され、そしていきなり全米1位となった。

そしてこの瞬間から地球上のいたるところで、若者たちが熱狂し、大人たちがうろたえ憤激した、ロックンロールのお祭り騒ぎが始まったのだ。まさに、世界を変えた1曲と言えるだろう。

キース・リチャーズは自伝で、13歳の時にこの曲を聴いて「気絶しそうな衝撃、初めての感覚だ、おれはこの出会いを待っていたかのようだった。翌日、目が覚めたらおれは別人になっていた」と記している。

8歳のときにこの曲を聴いたロバート・プラントは「それはとても動物的で、性的で、私にとって初めての音楽的興奮だった」と語った。

U2のボノも「白人音楽のメロディやコード進行というヨーロッパ文化と、黒人音楽のリズムというアフリカ文化とが出会って、ロックンロールのビッグ・バンが起こった。そのすべての原点は、エルヴィスにある」と語っている。

この、今聴いてもジャンルがよくわからない「ハートブレイク・ホテル」は、全米ポップチャートで1位、米カントリーチャート1位、そして米R&Bチャートでも5位という、3つのチャートの上位にランクインするという前代未聞の快挙を成し遂げた。

どのジャンルにも当てはまらない新しさと、どのジャンルのリスナーからも支持されるという、人種や世代の壁を超えた、まさに革命的なシンガーの降臨だったのだ。

わたしがこの曲を聴いたのはたぶん二十歳ぐらいの頃だったと思うけど、ストーンズやビートルズやスプリングスティーンも聴いた後で、時代を遡って聴いたのだった。

「キング・オブ・ロックンロール」と呼ばれたエルヴィスのデビュー曲は、わたしが勝手に想像していた力強くマッチョなロックンロールとは全然違う印象だった。

シンプルな小編成のバンドと、まだ少年のようなか弱さを残しているような声で情感たっぷりに歌われるこの哀し気な音楽に、シブっ、と思わず唸らされた。

彼は歌を上手く歌うことよりも、フィーリングをなによりも大切にしていた。

そのルックスも含めて、うわあやっぱりカッコええなあと、ちょっと女の子みたいに惚れそうになってしまった。

チャック・ベリーのような明るいロックンロールじゃなくてこんな暗い歌をデビュー・シングルに選んだことも凄いと思った。
ただのエンテーテインメントやヒットソングだけじゃない、エルヴィスはなにかもっと切実なものを追い求めていたに違いないのだ。

(Goro)

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