1970年に、忌野清志郎、小林和生、破廉ケンチのフォーク・トリオとしてデビューしたRCサクセションは、3枚目のシングル「僕の好きな先生」がヒットしたもののその後はパッとせず、実に10年もの間、不遇の時代を過ごす。
しかしこの間に発表された3枚のアルバム『初期のRCサクセション』『楽しい夕に』『シングルマン』はすべて充実した内容の名盤である。
彼らがブレイクするきっかけになったのは、78年に仲井戸麗市と新井田耕造の加入、そして清志郎の派手なメイクによるロックスタイルのバンドにシフトチェンジしたことによる。
当時わたしは中学生だったけど、その清志郎の異様な見た目と子供のような高い声、リアルな言葉によるぶっ飛んだ歌詞に衝撃を受けたものだった。
テレビの歌番組に出てくるような歌謡ロックバンドとはまったく違う、毒とアブナイ空気が漂いホンモノのロックバンドだった。
わたしは、初めて出会ったホンモノのロックバンドに夢中になり、それ以来、ずっとロックを聴き続けている。
ここではそんなRCサクセションを、はじめて聴く人のための10曲を選んでみました。
(作詞・作曲:忌野清志郎・仲井戸麗市)
80年代の幕開けと共に、RCサクセション・ロック化第一弾として発表されたこの曲が彼らの出世作となり、代表曲となった。
バイクと女性を掛けたダブルミーニングの歌詞が当時中学生のわれわれの股間をザワつかせだものだった。
動画はライブアルバム『ラプソディー』に収録された音源のもの。
(作詞・作曲:忌野清志郎・G1,238,471)
もう何度も書いているけど、14才でこの曲を聴いたときに、わたしの中のなにかのスイッチが入ってしまい、今に至るのである。
それはもしかすると、成長停止スイッチなのかもしれない。
14才で、わたしは成長停止スイッチをカチッとONにしてしまったのだ。
だれかこれをOFFにする法を教えてくれ。
わたしはこの歌が伝えようとしている「うまく言えない、こんな気持ち」を14才のときに共感して、それ以来ずっと「こんな気持ち」を忘れないまま現在に至るから、こんなブログを書いているのだと思う。
(作詞・作曲:忌野清志郎・みかん)
あまりにも何度も聴きすぎ、深く没入したせいで、この歌詞に書かれた光景、市営グラウンドの駐車場、夜露に包まれた車の窓ガラス、車の中で手をつなぎ毛布にくるまっている若い男女、カー・ラジオのランプだけが光っている光景が、まるで自分が実際に経験したことのように、わたしの記憶に刻まれてしまった。
忌野清志郎がフォーク時代の最後に残した、というか、たどり着いた、日本のロック史上最もリアルな言葉と美しいメロディをもった極上の名曲。
(作詞・作曲:忌野清志郎)
わたしが一番好きなRCのアルバム『ラプソディー』のタイトル曲。
歌詞ではあまり多くは語られていないものの、「スロー・バラード」と同じように、あまりうまくはいっていない環境の中でも、お互いを唯一の支えにして生きているような、孤独な恋人たちのラブソングのようだ。
いつ聴いてもグッと来てしまう。
(作詞・作曲:忌野清志郎)
この曲のインパクトは凄かった。
わたしはまだ14才で、こんな歌詞を書くロック・バンドも、こんな歌い方をするヴォーカリストも聴いたことがなかったからだ。 唯一無二の存在だった。
この歌詞は実際にあった話を元にしていて、後年その真意がわかったのだけど、それで逆にちょっと面白さが半減してしまった気がするので、ここではどういうワケなのかは書かない。
歌われているままを、想像して聴いた方が面白い。
(作詞・作曲:RCサクセション)
ドラムによるイントロが印象的な、ショーの始まりを告げるオープニングナンバー。
まるで工場のような打撃系ビートと、引きずるようなギターがカッコいい。
「役立たずの神様、ハードロックが大好き」なんて歌詞もホント、イカした曲だ。
(作詞・作曲:忌野清志郎)
60年代のソウル歌手、オーティス・レディングを清志郎は愛し、そのヴォーカル・スタイルにも影響を受けている。
この曲はまさにそのオーティスが書いていたような、ホーンを中心に据えた、アレンジもいかにもそれっぽく作られた、ホンモノのソウル・ミュージックだ。
この曲こそ、忌野清志郎の音楽性の核となるものなのかもしれない。
曲のエンディングではオーティスの名曲「ドック・オブ・ベイ」の歌詞も出てくる、まさにオーティスに捧げられたナンバーだ。
(作詞:忌野清志郎 作曲:肝沢幅一)
1stアルバム『初期のRCサクセション』からシングル・カットされてヒットした、フォーク・トリオ時代の代表曲。
清志郎の高校時代の恩師、美術部顧問の小林先生のことを歌った曲である。
小林先生はこの歌に描かれている通りの人で、勉強をあまりしないでバンド活動に熱中していた清志郎にも理解を示し、清志郎を心配する母親を説得したこともあるそうだ。
清志郎はこのアルバムが出来上がったときに、小林先生のもとに自ら持参したということだ。
(作詞:忌野清志郎 作曲:肝沢幅一)
一緒に仕事をして来たスタッフの、突然の死について歌われた名曲。
その訃報があまりに信じ難く、受け入れ難かった感情の乱れと悲しみが、痛切な言葉で書かれた名詩だ。
ライヴ・アルバム『the TEARS OF a CLOWN』での清志郎の慟哭が忘れ難い。
(作詞・作曲:G忌麗)
ちょっと懐古的な趣もある曲調のホンキー・トンク・ロックンロールで、自らを戯画化して、自虐も交えて歌っている。 RCサクセションのコンサートの最後を飾る曲として、よく演奏された。
カッコ良さとだらしなさと微笑ましさが絶妙なバランスの歌詞は、やはり清志郎の真骨頂だ。
「粋がったりビビったりして、ここまで来た」っていう歌詞が個人的には好きだなあ。
RCサクセションの名盤を3枚選ぶなら、わたしは『ラプソディー』『シングル・マン』『PLEASE』を選ぶ。
他にも『楽しい夕に』も素晴らしいし、RCの最後のアルバム『Baby a Go Go』もお気に入りのひとつだ。
最初に聴くなら『ラプソディー』がお薦め。RCサクセションが「よォーこそ」と言って迎えてくれる。