はじめてのC.C.R.(クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル)10 Creedence Clearwater Revival Songs to Listen to First

Ultimate: Greatest Hits & All

1968年にデビューしたC.C.R.(クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル)の音楽は、ロックンロールという音楽がそもそも、黒人のブルースと白人のカントリーを融合させて生まれた、アメリカの風土が育んだ音楽であることをあらためて思い出させてくれる。

アメリカの大地のそこかしこに転がっている「ロックの原石」を、そのまま拾い上げ、職人技で磨き上げただけのような、シンプルでありながら味わい深い魅力を放つ輝きは、当時世界を席巻していたイギリスのロックとはひと味もふた味も違う、真にアメリカらしいロックであり、ロックの原点のようでもあった。

60年代末、ビートルズが解散し、新たにハード・ロックやプログレッシブ・ロックが台頭してきたころ、ロックはさらなる進化を模索し、複雑化し、技巧化し、肥大化していく中でC.C.R.の、ロックの原点に還るような方向性は真逆と言えたが、聴衆の圧倒的な支持を得て、シングル・ヒットを連発した。
しかしC.C.R.も、活動期間はわずか4年と、寿命の短かったバンドだ。そのわずか4年のあいだに7枚のアルバムを残した。彼らもまた時代を駆け抜けたロック・バンドだった。

そんなC.C.R.をはじめて聴く方のために、彼らの名曲を10曲に厳選して選んでみた。
ここに選んだ10曲はすべて、バンドのヴォーカリストであり、ほとんどの曲を書いている、ジョン・フォガティの作だ。C.C.R.というバンドは、基本的にジョン・フォガティのバンドなのである。

彼らの最初のビッグ・ヒットから発表順に、C.C.R.の道のりと進化を辿りながら紹介していきたいと思います。

#1 プラウド・メアリー(1969)
Proud Mary

Bayou Country

1968年発表の1stアルバム『スージーQ』は、当時の流行でもあった、全編ゴリッゴリのブルース・ロックだった。「スージーQ」「アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー」というブルースの名曲カバーをまさに黒人歌手のように歌いこなすジョン・フォガティのヴォーカルは見事に尽きるが、これだけにとどまれば、その後の世界的人気を得ることもなく、ロックの歴史からも消え去っていっただろう。

2ndアルバム『バイヨー・カントリー』もその路線を踏襲しているが、なぜか1曲だけテイストがまるで違う、超シンプルなカントリー風のこの曲「プラウド・メアリー」が収録されている。この曲がシングル・カットされて、全米2位というC.C.R.にとって初の大ヒットとなった。
それまで無名だった彼らが、急にアメリカのどこへ行っても「プラウド・メアリーを歌ってる歌手だろ?」と声をかけられるようになった、とジョン・フォガティは後年語っている。

都会で働くことにつかれた男が、プラウド・メアリー号という蒸気船に乗って川を下りながら南部の町を訪れ、ホイールを回して川を航行する様子を楽しんでいる。のどかな情景の中で、心の中に新たな希望が芽生えるような、そんな歌だ。

#2 バッド・ムーン・ライジング(1969)
Bad Moon Rising

Green River

「プラウド・メアリー」の大ヒットで気をよくして路線変更となったのか、3rdアルバム『グリーン・リヴァー』以降、さらにカントリー・テイストが濃い楽曲が増えていく。

この曲も全米2位、そしてイギリスではなんと初の1位となる大ヒットとなった。
軽快な曲調だけど、歌詞は「悪い月が昇ってる。終末は近い。死ぬ用意はできてるか?」と、不安を煽るような歌詞だ。
ブラック・ユーモア的なことなのかな?

#3 ロディ(1969)
Lodi

Green River

「ロディ」はカリフォルニアの地名で、お客が入らない辺鄙な場所でライヴをしなければならないバンドの苦労を歌った歌だ。3rdアルバム『グリーン・リヴァー』に収録され、「バッド・ムーン・ライジング」のシングルのB面にも収録された。

コード進行もメロディもアレンジも、特別なことを何ひとつしていないのになぜかグッとくる。C.C.R.の曲の中でもわたしが最も好きな曲のひとつ。

#4 ダウン・オン・ザ・コーナー(1969)
Down on the Corner

WILLY AND THE POORBOYS ウィリー・アンド・ザ・プアボーイズ [12" Analog LP Record]

絶好調だった1969年のC.C.R.は、この年だけで3枚目のアルバム『ウィリー・アンド・ザ・プアボーイズ』を発表する。路上で演奏する貧乏バンドに扮したコンセプト・アルバムである。その冒頭を飾るのがこの曲だ。全米3位の大ヒットとなった。

C.C.R.にはめずらしいリズムだが、この曲もまたシンプルを極めるメロディなのに、なぜか魅力的である。音楽なんて結局、鼻歌で歌いたくなる歌がいちばんなんじゃないか、といつも思うことを、やっぱり思ってしまう。

#5 フォーチュネイト・サン(1969)
Fortunate Son

Willy & Poor Boys

タイトルは「幸運な息子」という意味だ。

時代はベトナム戦争の真っただ中、億万長者や政治家の息子に生まれたために戦地に送られずに済んだ「幸運な息子」と、その代わりとして徴兵される自分たちの運命に対しての憤りを歌った歌だ。C.C.R.にしては歌詞もサウンドもかなりハードなプロテスト・ソングとなっている。
反戦歌と呼ばれるものには実にくだらないものが多くてわたしは滅多に共感できないが、この歌には100%共感する。
この曲は映画『フォレスト・ガンプ』で主人公がヘリコプターに乗せられてベトナムへ送られるシーンでも使われるなど、長く聴き継がれて、C.C.R.の代表曲となっていった。
しかし、なぜかこの曲には作者であるジョン・フォガティに著作権がなく、後年ジーンズのCMにこの曲が使用されたときは、ジョン・フォガティは「あの曲とジーンズになんの関係があるのかまったくわからない」と憤りを隠さなかったという。

#6 アップ・アラウンド・ザ・ベンド(1970)
Up Around the Bend

Cosmo's Factory [Lp] [12 inch Analog]

1970年に発表された5thアルバム『コスモズ・ファクトリー』は全米1位となり、現在もC.C.R.の代表作として知られている名盤である。
この曲はそのアルバムからのシングルで、全米4位の大ヒットとなった。エレキギターのイントロがカッコいい、エネルギッシュでテンションの上がるロックンロールだ。
ハノイ・ロックスが1984年にカバーして人気を博したせいか、日本でもよく知られている曲だ。

#7 ジャングルを越えて(1970)
Run Through The Jungle

Cosmo's Factory [Lp] [12 inch Analog]

『コスモズ・ファクトリー』収録曲で、シングル「アップ・アラウンド・ザ・ベンド」のB面にもなった曲。

C.C.R.はカントリー・ロックだけでなくブルース・ロックも多く演奏したが、この曲はオリジナル曲の中では最も良い出来のブルース・ナンバーだとわたしは思う。

ハウリン・ウルフを想起させるような不穏なグルーヴと、ジョン・フォガティのヴォーカルにシビれる。異国の地のジャングルを進んでいくような、時代背景からベトナム戦争を想起させる曲だ。

#8 ルッキン・アウト・マイ・バック・ドア(1970)
Lookin’ Out My Back Door

Cosmo's Factory [Lp] [12 inch Analog]

『コスモズ・ファクトリー』からのシングルで、全米2位の大ヒットとなった。

CCRは全米2位のシングルが5枚もあるのに、全米1位は一度も獲ったことがないという悲運のバンドでもあった。しかしこの曲も、カナダ、オーストラリア、オーストリア、ノルウェーでは1位を獲得している。

「バック・オーウェンズのレコードを聴く」などという歌詞も出てくる、コッテコテのカントリー・ロック作品。

#9 フール・ストップ・ザ・レイン(1970)
Who’ll Stop The Rain

Cosmo's Factory [Lp] [12 inch Analog]

C.C.R.の中でも特に好きな曲のひとつだ。
この無駄のない、短くてシンプルなメロディ、なのに情感の豊かなこと。何度聴いても感心する。

テクニックの洪水や複雑極まるソングライティングにはわたしはとくにピンとこないし感心もしないけれど、無駄のない単純な美しさには感動を覚えるのである。
もしかすると侘び寂びみたいなものがわたしにもわかってきたのかもしれない。

だからC.C.R.などは年を取るにつれてますます「凄いな」と思うようになってきた。

歌詞は、変わりゆく世を憂う、そんな歌だ。
ジョン・フォガティらしいが、そういう歌はいつの時代でも共感を得るに違いない。

#10 雨を見たかい(1970)
have you ever seen the rain

PENDULUM-40TH ANN.EDITION

C.C.R.の代表曲として、日本では圧倒的に有名な曲だ。

しかし当時は全米8位と、それまでのシングルに比べると、やや伸び悩んだ。当時この曲がアメリカで放送禁止とされたせいかもしれない。

歌詞がベトナム戦争を批判し、「晴れた日に降るキラキラした雨」というのがナパーム弾のことを言ってるという説が流れたからなのだが、ジョン・フォガティは否定している。
バンド内での不和が高まっていった時期で、ある日雨を眺めながら、このバンドもそろそろ終わりかな、という寂しい気持ちで書いたのだそうだ。

6thアルバム『ペンデュラム』に収録された曲だが、その次の7thアルバム『マルディグラ』ではジョン・フォガティ以外のメンバーも曲を書き、リード・ヴォーカルも取るという「民主的」な作品となったが、ただただジョンの曲と他のメンバーの曲のクオリティの違いが際立っているだけの、失敗作である。このアルバムを最後に、C.C.R.は解散する。

これ以上はないほどシンプルな曲なのに、一生聴き続けても飽きない。
ジョン・フォガティはそういう曲を書く天才だ。

この少ししゃがれた粘っこい独特の声がまたいい。
シンプルな曲が、この表情豊かな声によって陰影や哀愁を帯び、感情を揺さぶり、聴きごたえのあるものになる。

まさにロックを歌うために生まれてきたような男だ。
現在もソロで活動中だが、その衰えを知らない歌声に驚かされる。

C.C.R.のアルバムを1枚聴くなら、まずはベスト盤をお薦めする。それは、C.C.R.があの当時のバンドにしてはめずらしく、シングル・レコードに力を入れていたからでもある。

CREEDENCE CLEARWATER REVIVAL:CHRONICLE THE 20 GREATESTHITS
オリジナル・アルバムならやはり、『コスモズ・ファクトリー』『グリーン・リヴァー』がお薦めだ。

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コメント

  1. 遠州ヒマ助 より:

    こんばんは,CCRいいですね,自分は大好きなバンドです。プラウド・メアリーなんてほとんどDコードという単純なコード進行なのに,聞けば聞くほど味が出るんです。アイク&ティナターナーがこの曲をすごいアレンジでシングル出しましたが,こちらも好きです。あの頃は,CCR,GFR,BSTなどのバンドが活躍してましたね。

    • ゴロー より:

      お久しぶりです! コメントありがとうございます!

      そうですね、CCRの音楽は、これ以上は無いというぐらい単純な音楽なのに、何年聴き続けても飽きるということがありませんね。
      流行にも関係なく、食べ物で言うと、白米や食パンのようなものかもしれません。