悩殺爆弾〜禁断のロックン・ロール・クイーン【日本が愛した洋楽ヒット #12】ザ・ランナウェイズ/チェリー・ボンブ (1976)

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ザ・ランナウェイズ/チェリー・ボンブ (1976)
The Runaways – Cherry Bomb

なんといっても、史上初の女子だけのロックバンドというのがエラい(本当は60年代にも女子バンドはいたのだけれど、売れていないのでカウントしない)。

しかもデビュー当時、彼女たちは平均年齢17歳。ヴォーカルのシェリーなどは、16歳だ。
16歳でランジェリー姿で大股開きで歌うというのは、今の時代ならまあ許されないだろう。

でもロックンロールってのはそういうもんだ。許されるとか許されないなんてそもそも知ったこっちゃない。彼らは”自由”の象徴なのだ。
今はもう、ロックンロールが許されない時代なんだろう、きっと。

あの時代、ロックというのはある意味、治外法権みたいなもので、リアルなファンタジーの世界だったのだろう。
ドラッグの使用なんてあたりまえ、ホテルの部屋を壊したってロックスター伝説のひとつにすぎないし、グルーピーたちがロックスターに抱かれるために列を作るのもあたりまえだったのだ。

でも今は違う。ロックスターが女とヤッただけで不倫だのなんだのと真面目な顔で報じられ、一般庶民用のルールでバッシングされ、ファンタジー界から引きずり降ろされるのだ。
「ミュージシャンだろうがなんだろうが、おまえたちだって特別じゃない、わたしら一般庶民と同じルールで生きろ」ということなのだろう。

もはやファンタジーではいられなくなったから、ロックンロールは死んでしまったのかもしれない。

ランナウェイズは、本国アメリカでは成功しなかったが、日本では大成功した。
この「チェリー・ボンブ」も、全米チャート106位とふるわなかったが、日本のオリコンではシングルチャートの10位まで上がる大ヒットとなった。

ちなみに1stアルバムは”The Runaways”という単なるセルフ・タイトルなのだけれども、邦題は『悩殺爆弾〜禁断のロックン・ロール・クイーン』という、これも今の感覚で言えばセクハラ目線やキワモノ的な扱いを感じるタイトルではあるけれども、結果的に本国よりも売れたのだからその戦略も正解だったのだろう。
昭和の強引な販売戦略そのものだが、しかしそういうことをしなくなって、原題カタカナ表記があたりまえになったのも、日本で洋楽が売れなくなったことと関係があるような気もする。

77年にはヴォーカルのシェリーが脱退し、ギターのジョーン・ジェットがヴォーカルも兼任するようになるが、やがてパンク的なアプローチを主張したジェットと、ハードロックを追求したい他のメンバーとの方向性が合わなかったことなどもあり、79年には解散してしまった。

(Goro)