リトル・リチャード【名曲ベストテン】 LITTLE RICHARD Greatest 10 Songs

Very Best of Little Richard

米ジョージア州メイコン出身のリトル・リチャードは、ロックンロールが生まれた年、1955年に「トゥッティ・フルッティ」の大ヒットで世界に降臨した。

爆風のような圧倒的なシャウトによる彼のロックンロールは、寝呆けたような毎日を送っていた若者たちに、目覚めよ!! とドヤしつけたのだった。

まるでリードが切れて狂ったように走り出す犬のように、リトル・リチャードは髪を逆立て、化粧をして、キンキラキンの衣裳を着て、ピアノを叩きまくりながら、タガが外れたように世界一の大声で絶叫しながら踊り狂った。

当時の常識的な大人たちには、ロックンロールの燃え上がる業火に包まれた、この世の平和を破壊するために降臨した恐るべき悪魔に見えたに違いない。

しかし、まどろみから覚めた若者たちはきっと、彼につられて狂ったように暴れ出し、首のリードを断ち切ろうとしたにちがいない。

ロックンロールの誕生にリトル・リチャードが担った偉大な役割は、すべてのタガをはずして、感情を解放して思いのままに叫び、肉体を解放して踊り狂う、自由と野性のシンボルだった。

また、彼は同性愛者であることを早くからカミングアウトし、化粧したり女装したりして歌った(その意味でグラム・ロックの祖でもある)。

公民権運動が盛り上がるよりもっと前の時代、今では考えられないほどマイノリティへの差別が激しかった時代のことだ。彼は本当に強い、偉大な人間だったのだろう。

2020年に彼は87歳でこの世を去ったが、心の底から感謝を述べたい。
「世界を変えてくれてありがとうございました」と。

以下はわたしが愛するリトル・リチャードの至極の名曲ベスト5である。

第10位 レディ・テディ(1956)
Ready Teddy

1956年6月にリリースされたシングル「リップ・イット・アップ」のB面に収録された曲。

エルヴィス・プレスリーが56年9月にTV番組『エド・サリバン・ショー』で出演した際にこの曲を歌い、一躍有名になった。番組は6千万人が視聴したとされている。

第9位 ジェニー・ジェニー(1957)
Jenny Jenny

1957年3月に発表された1stアルバム『ヒアズ・リトル・リチャード』からのシングル・カット。全米10位の大ヒットとなった。

リトル・リチャード自身が書いた曲だが、わたしは長年、エディ・コクランの「ジニー・ジニー・ジニー」はこの曲をアレンジして歌っているのかと思っていたが、後者はコクランのオリジナルであった。似てるけどなあ。

第8位 ザ・ガール・キャント・ヘルプ・イット(1956)
The Girl Can’t Help It

1956年12月に公開された同タイトルのアメリカ映画『女はそれを我慢できない』の主題歌となった曲。当時、まだ生まれたばかりのロックンロールが多く出てくる映画で、リトル・リチャード自身も出演しているほか、ファッツ・ドミノ、ジーン・ヴィンセント、エディ・コクランなども出演している。

米R&Bチャート7位、全英9位のヒットとなり、2ndアルバム『リトル・リチャード』に収録された。

第7位 キープ・ア・ノッキン(1957)
Keep A-Knockin’

1957年8月にリリースされたシングルで、全米8位の大ヒットを記録した、荒々しく爆竹が破裂するようなイントロからすでにワクワクする、豪速球のロックンロール・ソングだ。

行儀が悪いために部屋に入れてもらえない恋人のことを歌った歌である。

第6位 リップ・イット・アップ(1956)
Rip It Up

1956年5月にリリースされたシングル。全米17位、R&Bチャート1位ののヒットとなった。ニューオーリンズ風のR&Bで、ファンキーなのにクールなカッコ良さが光る名曲だ。

ジョン・レノンのアルバム『ロックンロール』でもカバーされている。

第5位 グッド・ゴリー、ミス・モリー(1958)
Good Golly Miss Molly

全米10位の大ヒットとなった、いかにも彼らしい、リトル・リチャードの代表曲のひとつ。ジェリー・リー・ルイスやCCRなど、後に多くのカバーも生んだ。

ミス・モリーとのダンスは最高だぜ! と連呼する歌だけれど、ダンスと言い換えてるだけで性交渉のことを言ってる、実に野蛮で楽しい歌だ。

第4位 スリッピン・アンド・スライディン(1956)
Slippin’ and Slidin’

大ヒット・シングル「のっぽのサリー」のB面に収録された曲。

シンプルな12小節のブルースだが、単純なシャッフルとも違うリズムがカッコ良く、なによりここではシャウトしないリトル・リチャードのキレのいいヴォーカルが素晴らしい。ハスキーだけど艶っぽい、場末のスナックのチーママのような声だ。

あらためて、良い声だなあ、と思う。

第3位 ルシール(1957)
Lucille

初期の大はしゃぎの代表曲の数々に比べると、テンポを少し落としたエイトビートになり、重いベースとドラム、冷静なサックスによる、バンドのグルーヴがカッコいい。

リトル・リチャードの曲はその多くがリチャードを含む共作となっているようだ。
実際にはリチャードが主導して書いてるようなのだけれど、1人で書かせるととんでもない歌詞を書くので、それを止めるために共作にさせられたらしい。

いらんことをするものだ。

第2位 トゥッティ・フルッティ(1955)
Tutti Frutti

リトル・リチャードは1951年にレコード・デビューしたものの、はじめの4年間はまったく売れなかった。その彼がついに爆発した、全米18位となった最初の大ヒット曲だ。

巡り合わせというか、1955年という年はきっと、狼男を変身させる満月の夜みたいなものだったのかもしれない。ついにそのときがきたのだった。

彼は世界中の夜の闇を切り裂き、安らかな寝息を立てる人々叩き起こすように、「ロック史上最も偉大なイントロ」を咆哮したのだ。

第1位 のっぽのサリー(1956)
Long Tall Sally

全米6位と彼にとってシングルチャート最高位を記録した、大ヒット曲。

もしもテンションの高さをサーモグラフィみたいに計測できる装置があったら、世界一真っ赤になるのはこの曲ではないかとわたしは思っている。

「ジョンおじさんがのっぽのサリーと浮気してるからメアリおばさんに言いつけてやろうかな」という歌詞だ。「サリーは頭が薄くて、ジョンおじさんの好みのタイプ。メアリおばさんに見つかりそうになってあわてて路地に隠れた、今夜は面白くなりそうだ」と歌われる。

サリーって女性じゃなかったんだな…。

ここで選んだ10曲は、すべて以下のベスト盤に収録されている。

願わくば、リトル・リチャードの音楽がロックンロールの真髄として永遠に聴き継がれますように。

(Goro)

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