パブ・ロックやNYパンクの影響からアンダーグラウンドで生まれたロンドン・パンクは1976年10月、そのムーヴメントの初めてのレコードとなるダムドのシングル「ニュー・ローズ」という、百万発の爆竹のような祝砲によって本格的にスタートした。多くの大人が耳を塞ぎ、多くの若者が熱狂した。
セックス・ピストルズ、クラッシュと並んで3大ロンドン・パンクと称されたダムドは、今では他の2つの伝説的な知名度と今も続く人気に比べるとかなり見劣りがするし、有名曲もほとんどない。
でもダムドはそれでいいのだ。
パンク・ロックとはもともと、巨大産業化したロックに対するアンチテーゼとして生まれたのだ。
きれいな音の退屈なロックや、アート気取りの小難しいロックにうんざりした新世代の若者たちが、より激しく、よりうるさく、よりスピード感のある、生々しいロックを求めたのだった。
まさにそのすべてを満たしていたのがダムドだった。
彼らはロックスターではなく、ただのクソッタレで、なんのメッセージもなく、なんの薬にもならない、セックス・ピストルズよりも聴きにくく、クラッシュよりも教わることが少ない、ただただ騒々しくて、ただただカッコいいいだけの、わけはわからないけどやたらと気分が昂揚するだけの、真のパンク・バンドだった。
パンク・ロックの原点を知るためにもダムドは聴いておいたほうがいいだろう。
ピストルズ、クラッシュを聴いて気に入ったなら、ほんのついででいい。下に挙げるたった3曲だけでいいので、ダムドを聴いてみてほしい。
人によっては意外と「ダムド、サイコーじゃん!」と、ピストルズやクラッシュよりも気に入る可能性だってあったりするのだ。
New Rose
ピストルズやクラッシュよりも早く、ロンドン・パンク初のレコードとなったのがダムドのこのデビュー・シングル。
英国パンク幕開けのファンファーレにふさわしい、豪快で壮絶で、まさにパンク・ロックそのもの、めちゃくちゃカッコいい名曲だ。
Neat Neat Neat
名盤1st『地獄に堕ちた野郎ども(Damned Damned Damned)』のオープニングを飾る曲。
抑えきれないフラストレーションが爆発したような、凄まじい勢いと騒々しさが最高だ。
吸血鬼の格好をしたヴォーカルのデイヴ、1stのほぼ全曲を書いたギターのブライアン、うねりまくるベースのキャプテン・センシブル、異常天才ドラマー・ラットの4人のオリジナル・メンバーの演奏が圧巻だけど、残念ながらこのメンバー構成は1stアルバムのみで終わった。
Love Song
3rdアルバム『マシンガン・エチケット』からのシングルで、全英20位と、彼らにとって初めてのヒット・ソングとなった。
「君が配達員なら僕は荷物になる。君がゴミ箱なら僕はゴミになる。君が缶詰なら僕はラベルの絵の具になる」とバカがバカなりに真剣に愛を伝えているような素敵な曲だ。
世の中にはラヴソングが腐るほどあるけど、バカの気持ちを歌ったラヴソングなんて滅多にないので貴重である。
選んだ3曲がぶっ続けで聴けるプレイリストを作成しましたので、ご利用ください。
入門用にダムドのアルバムを最初に聴くなら、まずはパンク・ロックの伝説的名盤1st『地獄に堕ちた野郎ども(Damned Damned Damned)』から。
ちなみに彼らのベスト・アルバムは、レコード会社を移籍している関係で本当にベストと言える内容のものがない。
(by goro)