RUN-D.M.C.&エアロスミス/ウォーク・ジス・ウェイ(1986)

【コラボの快楽】
Run DMC and Aerosmith – Walk This Way

当時、1stアルバムがミリオン・セラーを記録するなど大ブレイク中だったニューヨークのヒップホップ・グループ、Run-D.M.C.による、エアロスミスの1975年のヒット曲のカバー。

もともとはあの有名なリフをループさせてラップを乗せるつもりだったそうだが、名プロデューサー、リック・ルービンのアイデアでラップを乗せるのではなく、オリジナルのリリックの通りにそのままカバーし、さらにエアロスミスの2人、スティーヴン・タイラーとジョー・ペリーにもレコーディングに参加してもらうことになったのだという。

当時のエアロスミスは、70年代末からドラッグなどの影響でバンドが崩壊し、すでに10年近い低迷期を過ごしていた。
Run-D.M.C.も実はエアロスミスのことをよく知らなかったらしい。
当時の若いリスナーには、人気絶頂のRun-D.M.C.が、落ちぶれてすでに過去の人となっていたロックバンドを引っ張り出してきた、と映っていたに違いない。

しかしこのコラボは結果的に、ロックとヒップホップを初めて融合させた歴史的な共演となり、シングルは大当たりして全米4位の大ヒットとなった。

スティーヴンとジョーは文字通り「ロックとヒップホップの壁を壊す」演出のPVにも出演した。

わたしは当時の数少ない洋楽番組でこのPVを見て、「おー! エアロスミスが出てる!」と盛り上がったものだった。きっとわたしの世代のロック好きの多くは同じ想いだったにちがいない。70年代のエアロスミスは日本でも人気があったが、もうすっかり消えたバンドだったからだ。

また、わたしはヒップホップに疎いので、このときのRun-D.M.C.がわたしにとって最初に知ったヒップホップ・グループでもあった。「へぇー、これがラップっつーもんか」と思ったものだ。これもたぶん、われわれの世代にはそんな人が多いと思う。

このコラボの大ヒットをきっかけにエアロスミスは存在感を示し、そして奇跡の復活劇が始まったのである。

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