ビリー・ジョエル/マイ・ライフ(1978)

【70年代ロックの快楽】
Billy Joel – My Life

songwriter : Billy Joel

ビリー・ジョエルの6枚目のアルバム『ニューヨーク52番街(52nd Street)』からのシングルで、全米3位の大ヒットとなった。アルバムも、初めての全米1位に輝いた。
日本でもオリコン37位のヒットを記録し、「ストレンジャー」や「オネスティ」と並ぶ、ビリー・ジョエルの代表曲として広く知られている。

売れない芸人をしている友人の貧しい暮らしぶりを心配するが、友人は「裕福じゃないけど、この人生に満足してる、おれのことはほっといてくれ。チャンスなんていらないよ」と言い、

I don’t care what you say anymore,
this is my life

「てめーなんかに、なにを言われたって気にもならねー。これがおれの人生ですから」と歌う。

おれの人生を、おまえの価値観で判断すんじゃねーよ! っていうことだ。
まったく、その通り。
そもそもロックという音楽が共通して言ってるのはそれであって、多種多様な価値観の存在を無条件に肯定することだ。それがたとえ悪魔的であっても、非倫理的であっても、非常識であっても。

そういえばわたしのロック好きの友人たちなんて、みんなそれぞれの価値観で、好きなように生きている。好きなように生きてるから、生活が楽なやつはひとりもいない。わたしもそのひとりだ。

若い人たちは、この先裕福な暮らしをしたければ、今すぐロックを聴くのをやめたほうがいい。

ビリー・ジョエルは、クラシックやジャズの素養も備え、高度に熟練したポップスを生み出しながら、ロック的なアプローチをしたがるやんちゃなところもある。

ロマンティックでポップなメロディを優しい声で歌いながら、ここぞというときにシャウトすることも忘れない。
わたしがビリー・ジョエルを好きなのはそういうところだ。

この曲もまたそんな曲だ。
一度聴いたら忘れられない、シンプルで明快なメロディが心に残り、老若男女だれもが楽しめるポップスでありながら、歌詞も含めて妙にアツいものがときどき漏れ出てくる。

ビリー・ジョエルは見かけよりずっと、熱男なのだ。

そういえば以前の職場で、わたしとは真逆のタイプの、無趣味・仕事人間の同僚に、たまたまわたしの大量の本やレコード・CDのコレクションのことを知られたときに、「ムダ遣いやね」と一笑に付されたことを思い出した。

「てめーなんかに、なにを言われたって気にもならねー。これがおれの人生ですから」と答えればよかったな。