名盤100選 56 カーペンターズ『青春の輝き~ヴェリー・ベスト・オブ・カーペンターズ』(1995)

個性的な女性ヴォーカリスト、とはふつうあまり言われないけど、わたしにとってはこのカーペンターズのカレンこそ唯一無比の声の持ち主であり、史上最高のヴォーカリストのひとりである。。

伸びやかな高音を武器にする女性ヴォーカリストは多いが、カレン・カーペンターはその低音の美しさに比類が無い。低音を武器にする女性ヴォーカルというのは、ジャズやカントリーの世界にはいても、ロック/ポップス界では滅多にいない。
その声でさらに天才的なリズム感を感じさせる歌い方をする人で、わたしは何度聴いてもその美しさに鳥肌が立つような感覚を覚える。

楽曲はポール・ウィリアムズやロジャー・ニコルズのような様々なプロフェッショナルが提供しているが、アレンジは主に兄のリチャード・カーペンターが手がけているらしい。
カレンの声を最大限に生かしたシンプル極まりないアレンジで、このアレンジがまた素晴らしい。天才ではないかと思う。

カレンの死によってカーペンターズが消滅する1983年まで、日本で最も多くアルバムを売った洋楽アーティストはビートルズで、カーペンターズはそれに次いで2位だった。しかしシングル盤はビートルズを超え、カーペンターズが1位だった。

カーペンターズのベスト盤はいくつも出ていて、わたしもこれまでいろいろなアルバムで楽しんできたが、「青春の輝き」で始まり「イエスタデイ・ワンス・モア」で終わる、この『青春の輝き~ヴェリー・ベスト・オブ・カーペンターズ』が選曲、曲順も含めて最も気に入っている。

比類なく美しい声と素晴らしい楽曲、芸術品のような完成度、カーペンターズの作品には流行もなにも関係なく、時代を超越した普遍性がある。ダヴィンチの絵画のように、たとえどれだけ時代が変わっても、100年後の世の中でも、ポピュラー音楽史上最も美しい音楽として聴かれ続けていることだろう。