バリー・マクガイア/明日なき世界 (1965)【’60s Rock Masterpiece】

【60年代ロックの名曲】
Barry McGuire
Eve of Destruction (1965)

この曲はボブ・ディランのプロテストソングに触発された19才のシンガー・ソングライター、P.F.スローンが書いた曲だ。

本人のバージョンはほとんど知られていないが、それをバリー・マクガイアが当時流行のフォークのスタイルでカバーして、1965年6月にシングルとしてリリースした。

同年の、米軍のベトナム戦争介入を直接的に批判した過激な内容のため、ラジオ局によっては放送禁止とされたにもかかわらず、かえってそのことが話題にもなり、全米1位の大ヒットとなった。

日本でもフォークブームの真っ只中の1969年に高石友也が訳詩を書き、日本語で歌っている。

東の空が燃えてるぜ
大砲の弾が破裂してるぜ
おまえは殺しの出来る年齢
でも選挙権もまだ持たされちゃいねえ
鉄砲かついで得意になって
これじゃ世界中が死人の山さ
でもよー 何度でも何度でも
おいらに言ってくれよ
世界が破滅の前夜だなんて
嘘だろう?

(written by P. F. Sloan 訳詞:高石友也)

わたしはこれをさらにカバーした、88年のRCサクセションのバージョンで知った。
高石友也の訳詩がなにしろ素晴らしいが、このあまりにストレートで激烈な歌詞が、いちばん似合っているのはやはり喧嘩腰の歌いっぷりでは右に出るものがいない忌野清志郎のRCバージョンだう。まるで彼らのために書かれた曲なのではないかと思うほどだ。

ベトナム戦争という、縁もゆかりもないアジアのジャングルへと兵役に駆り出されて命を使い捨てにされる理不尽さに、アメリカの若者たちの政治に対する不信感が募ったこの時代には多くの反戦歌やプロテストソングが作られ、歌われたが、この曲はストレートにすべてを言い尽くしていた。後の日本の反戦フォークソングのほとんどがこの曲の模倣にすぎないんじゃないかと思えてくるほどだ。

↓ 全米1位の大ヒットとなったバリー・マクガイアのバージョン。

↓ 1969年6月にリリースされた『坊や大きくならないで 高石友也フォーク・アルバム第3集』に収録されたバージョン。

↓ 1988年8月にリリースされたRCサクセションのアルバム『COVERS』に収録されたバージョン。そのあまりに過激な内容のため、所属の東芝EMIはアルバムを発売中止としたが、2ヶ月後にキティレコードから発売され、オリコン1位の大ヒットとなった。

(Goro)