名盤100選 44 クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル『コスモズ・ファクトリー』(1970)

もしもiTunesみたいに、わたしがこれまでの人生で聴いてきた楽曲の再生回数が正確にわかるとしたら、意外にかなり上位に入っていたりするのはこのCCRではないかと思う。

初めてCCRを聴いたのは二十歳前後のことだったと思う。
とくに強烈な印象を受けた記憶はないものの、覚えやすくて、ふつうの歌という印象で、好感は持った。

車の中で聴くのに向いた感じなのでその後も時々聴いた。
わたしはその後もパンクが好きになったり、グランジが好きになったり、ソウルが好きになったり、色々な音楽を好きになったり、飽きたりした。
ニルヴァーナは凄く好きだったけど、もう何年も聴いていない。
どんなアーティストよりも聴いてきたイメージのローリング・ストーンズも、滅多に聴くことはない。
でもCCRは、その間も、そして今でも、時々車の中で聴く音楽だ。

CCRの音楽はシンプルだ。これ以上シンプルな音楽をわたしは思いつかない。
サウンドもシンプルなら、メロディもシンプルなものである。余分なもの、誇張されたもの、奇をてらったものがなにもない。
だから飽きない。だからわたしはCCRが好きだ。
流行のファッションに凝って色々ためしてみたけど、結局Tシャツとジーンズがいちばん楽でいいや、みたいな感じである。

若い頃は経験が浅く視野が狭いので、いま流行しているものの目新しさ心を奪われ、それが最上のものと感じてしまう。
でも年をとるとそんな流行廃りは何度も通過してきているので、流行り廃りに関係なく、自分に合ったものが見えてくるようになる。
CCRはその意味で、最も自分に合った音楽のひとつだとわたしは思うようになってきている。

CCRはその後のサザン・ロックなどに大きな影響を与え、7枚のアルバムを残したが、実質的な活動期間は4年程度と、その知名度やヒット曲の多さの印象よりかなり短い。

彼らは年に2枚ずつアルバムを出していたが、しかし最後のアルバムではいちばんやってはいけないことをやってしまった。
素晴らしい才能と声を持ったジョン・フォガティがいるにもかかわらず、各メンバーの曲やヴォーカルを採用するという”民主制”を強調した作品を作ったのである。

映画でも音楽でもそうだが、芸術やエンターテイメントに民主制などというものを導入するとろくなことにならないのだ。