No.232 ザ・ローリング・ストーンズ/悪魔を憐れむ歌 (1968)

Beggars Banquet
≪オールタイム・グレイテスト・ソング 500≫ その232
The Rolling Stones – Sympathy for the Devil

ストーンズの数ある名曲の中でも特に奇蹟のような凄味を持つのがこの「悪魔を憐れむ歌」だ。

ストーンズとしてはめずらしいサンバのリズムで始まり、ミック・ジャガーの、紳士的なフリをした悪魔が徐々に正体を現していくようなヴォーカルが凄い。
まるでこの世のものではないなにかにとり憑かれたかのようだ。エンディングで奇声を上げているのは残念ながら、もはやわれわれの知っているミックではない。
そしてキース・リチャーズも、悪魔の残忍な哄笑のような、おそろしく暴力的で切れ味の凄まじいギターソロを放つ。わたしはこれ以上に凶暴なギターソロを他に知らない。もちろんこのキースも、なにか得体のしれないものに憑かれている。彼もまた、もわれわれの知っているキースではない。

この曲は1968年のストーンズの転換点となるアルバム『ベガーズ・バンケット』の冒頭に収録された曲だ。
前作が『サタニック・マジェスティーズ』だったわけだが、この頃のストーンズは迷走していた。
ストーンズだけじゃなく、多くのブリティッシュビートのバンドはここからどこへ進めばいいか迷走していた頃だと思う。
ブルース一辺倒のバンドたちが消えていく中、ストーンズは『ベガーズ・バンケット』で米国南部の土の匂いのするルーツ・ミュージックやカントリーを大胆に取り入れて、それまでのブリティッシュビートのアルバムとはまったく違うものを創りあげた。

ジミー・ミラーのプロデュースもまた素晴らしい。彼がいなければこんなアルバムにはならなかっただろう。
このアルバムはあの時代のロックの奇跡がいっぺんに舞い降りて誕生したアルバムなのかもしれない。

なぜそもそもこの時期にカントリーを取り入れたのか興味深いものだけど、キース・リチャーズの自伝には、
「この時期、なんであんなふうにことがうまく運んだのかはわからない。タイミングかもしれない。自分たちの原点は何かとか、べつだん深く考えていたわけじゃなかった。やる必要のあることだった。アメリカの白人の音楽と黒人の音楽をミックスさせるのは大いに探求の余地があった」と書かれている。

他にもこの時期にカントリーミュージックを取り入れて新しい響きを作り出したバンドはいくつもあったが、結局いちばん成功したのはストーンズではなかったかとわたしは思う。
ストーンズはこのブルースとカントリーのツインエンジンで、70年代もロックシーンのトップを走り続けたのだ。

記事を書いた人(Goro)

愛知県在住。中学卒業後、無知蒙昧のまま社会にさ迷い出て、底辺職を転々した後、地元の映画館に拾われる。映画館に10年勤めた後、レンタルビデオチェーンのバイヤーを20年勤め、現在は再び底辺職で肉体労働の日々に返り咲く。心に平安が訪れている。生活に不満はなし。音楽にはいろいろと救われている。「映画は映画館で観なきゃダメ派」ではない。

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