名盤100選 46 ドクター・フィールグッド『ダウン・バイ・ザ・ジェティ』(1975)

くそカッチョええな、こりゃ。

はじめて聴いたドクター・フィールグッドのCDは、中古で買ったシングル集だった。
その1曲目の「ロクセット」、ベースから始まるイントロにウィルコ・ジョンソンの異様に切れるギターが入った瞬間に、わたしの背中に電流が走って、わたしの回転花火に火がついて、オワォォォーーーゥッッ、カァァッッチョエーーーーーーってなったのだ。

モノラル録音、モノクロのジャケット、ワイルドに渋くガツガツいくヴォーカル、そして唯一無比の斬鉄剣のような切れ味鋭いギター、ロックの原点に戻ってまた一から始めたようなブルージーでシンプルな曲と、ああもうなにもかもがカッコいいバンドなわけさよ。

なんとなく彼らにはサムライ魂が感じられるのもわたしが好感を持っているところだ。
いやバリバリのイギリス人であるが、ストイックで求道的なその心意気というかそのたたずまいというか、そのバキッとした感じというか、なんとなくサムライなのである。
イギリスもまあ島国だから日本と同じで、しっかり注意深く緊張感を持って生きてないと海に落ちてしまうわけで、そこが大陸の大雑把でぼんやり生きてる連中とは違うところだ。

ライヴ映像も、ただブルースを演奏してるだけなのに、今にも噛み付きそうなぐらいピリピリした空気はまるで革命前夜のようだ。
いや、その翌年にセックス・ピストルズが登場するのだから、たしかに革命前夜に違いない。
その革命勃発の火種となったのがこのドクター・フィールグッドをはじめ《パブロック》と呼ばれた、偉大なるマイナーな扇動者たちだ。

唯一無比のギタリスト、ウィルコ・ジョンソンは77年に脱退してしまった。
彼は実質2年しか在籍しなかったが、ドクター・フィールグッドと言えば彼のギターが真っ先に浮かぶぐらい、そのインパクトは強烈であった。ロック史上の伝説的ギタリストのひとりと言えるだろう。

他のメンバー・チェンジも激しく、実質的にはヴォーカルのリー・ブリローのバンドだったわけだが、そのリー・ブリローも94年に他界している。
でも驚くなかれ、ドクター・フィールグッドはオリジナル・メンバーがひとりもいなのに、現在もまだ活動している。モーニング娘。方式である。

そんなわけでわたしはこのアルバムを愛するものの、ドクター・フィールグッドにはそれほど詳しくない。
ドクター・フィールグッドの伝説的ギタリストはウィルコ・ジョンソンだけじゃないぞ、という説もある。
ここはやはり、日本ではチバユウスケ、ウルフルケイスケと並ぶドクター・フィールグッドのフォロワーである、HOT DOGS ユウスケ氏のコメントを待ちたいと思う。