No.246 アーニー・グレアム/フォー・ア・リトル・ホワイル (1971)

アーニー・グレアム(紙ジャケット仕様)
≪オールタイム・グレイテスト・ソング 500≫ その246
Ernie Graham – For a little while

素敵なジャケだ。
そしてこのアルバムは≪世界で最も無名な名盤≫かもしれない。

わたしはこのブログで過去に2回この人のことを書いていて、これで3度目だ。まるで広報担当みたいだな。
≪国際ロック秘宝館≫では「ザ・ガール・ザット・ターンド・ザ・レヴァー」を紹介したので、今回はちょうど曲順でその次に収録されている、この曲を選んだ。
ほんとはあと3曲ぐらい入れたいところなのだが、この1曲だけで我慢しよう。

アーニー・グレアムはアイルランド出身のシンガー・ソング・ライターだ。
ニック・ロウがザ・バンドに影響を受けて組んだバンド、ブリンズレー・シュウォーツをバックバンドに、1971年にこの唯一のアルバムを残した。

これ1枚しかアルバムを出せなかったのは、単純に売れなかったからだ。
彼の才能を認める人は多く、アルバムも最高の演奏で素晴らしいものになったのに、なぜか売れない。
わたしには理不尽とすら思えるほど、こんなに素晴らしいアーティストがなぜこんなに無名なのだろうと理解に苦しんだ。
わたしはもっともっと彼の音楽が聴きたかったのに。

彼は後年にレコードをあと1枚だけ、シン・リジイの曲をカバーしたシングルを出したものの、これもまたまったく売れずに、音楽界から引退してイギリスの国鉄に就職した。
オリエント急行の車掌を務め、2001年にロンドンで死んだ。54歳だった。
病死ということだが、詳細はわからない。

オリエント急行の、彼の音楽を知っている乗客から声をかけられることはあったのだろうか。
おそらく無かっただろうと想像する。
わたしがもしもその乗客だったら、こんなふうに伝えたかった。

「あなたのアルバムは最高です。あなたの音楽を聴いていると心が安らぎます。わたしはもう何度も何度も聴きました。これからも何度も何度も聴くでしょう。あんな素晴らしいレコードを出してくれて心からお礼を言いたいです。ありがとうございました」