名盤100選 76 エルヴィス・コステロ『ディス・イヤーズ・モデル』(1978)

ディス・イヤーズ・モデル

「コステロかあ」みたいな半笑いの、納得とも苦笑いともとれぬ微妙な反応が目にうかぶようだ。
と言ってはやはり失礼かな。

「おっ、やっと出たかコステロ。待ちくたびれたよ」みたいな人だっているにちがいない。
めっちゃ長くて詳細なコメントを書く気満々の人がいるのかもしれない。

じつはわたしにとっては、なにを書いたらいいのかよくわからないアーティストだ。
なのでめっちゃファンという方はコメントよろしく。どんだけ長くてもかまいません。
でも、だれも書かないほうに3千点。

コステロは1977年のデビューで、プロデュースはあのニック・ロウだ。
でもパブ・ロック~パンク~ニューウェイヴの流れのど真ん中から出てきたにしては、なんとなく異質な存在なのである。
その膝の力が抜けるようなカッコよくない名前や、でかい黒縁メガネで全体にゆるいユーモア仕上げみたいにしているのは、「反逆」みたいな当時流行のアティテュードから距離を置いた、純粋な音楽的才能のレベルの高さを自覚しての余裕のようにも見える。
あまり感じは良くないし、育ちの悪いわたしとしてはそりゃピストルズとかクラッシュとかのほうに自然と共感してしまいがちだ。

しかし音楽のほうは疾走感があり、それにひねりも加えた、新鮮なロックンロールだ。
その名前やルックスでどうしてもプレスリーやバディ・ホリーを連想してしまうものの、そのようなロックンロールの元祖たちにも恥じないような本物のポップセンスで、高揚感と爽快感のある新しいロックンロールを創造している。

感じは良くないが、まぶしいほどの才能の持ち主には違いない。
Fのキーで結婚式場のCMソング書いて、なんて頼めばものの15分で「あいよ、一丁あがり」と出してきそうな気がする。ついでにピアノの調律もしておいたからね、なんて言いそうな気さえする。
これも勝手な印象だが、わたしはコステロとサザンの桑田佳祐には似たところがあると思う。なんとなくだけど。

このアルバムはセカンドアルバムだ。何年ぶりかに聴いてみけどあらためて「面白いなあ」と感心した。この熟練した音楽が24歳の仕事かと思うとめまいがするほどだ。やっぱりたいした才能だ。ジャケもまたカッコいい。

ちなみにコステロの本名は、デクラン・パトリック・アロイシャス・マクマナスというそうだ。
イングランド生まれだが、アイルランド系である。