≪夜のロック≫その1
Neil Young – Tonight’s the Night
この曲は75年のニール・ヤングのアルバム、『今宵その夜』のタイトル曲である。
このアルバムは1972~3年にかけてニールが失った、2人の友人に捧げられている。
1人はクレイジー・ホースのギタリスト、ダニー・ウィットン。
「カウガール・イン・ザ・サンド」でニールと、まるで永遠に終わらないみたいなギターのインタープレイをした相手だ。
「おれとあんな風にギターが弾けるやつはいなかった」とニールは語っている。
しかし彼はドラッグと、あまりに深く関わりすぎてしまった。
1972年のニールとのツアー中、彼はもうまともな演奏ができなくなった。
ツアーの途中だったが、50ドルを渡されてLA行きの飛行機に乗せられ、帰途に就いた。
そしてその夜、彼は高純度のヘロインを手にし、この世を去った。
もうひとりは、その半年後、クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤングのローディーだった、ブルース・ベリーだ。
彼もまた、ヘロインの過剰摂取で命を落とした。
彼の名前はこの曲の歌詞にも出てくる。
彼が死んだと電話で聴いたときは喉が凍りついた、とニールは歌っている。
ニールとクレイジー・ホースのメンバーはテキーラをがぶ飲みしながらこの曲をレコーディングしたそうだ。
たしかにニールのヴォーカルはいつも以上にヘロヘロだけれど、その歌声には鬼気迫るような生々しい感情が漏れ出ている。
レコード会社はこのアルバムは商品にならないと思ったのか、お蔵入りにした。
そして2年後に陽の目を見ることとなった。
今でもニール・ヤングのファンの間で最も愛されているアルバムのひとつである。
この曲はニール・ヤングのライヴの最後に演奏されることが多い。
79年のライヴアルバム『ライヴ・ラスト』もそうだし、91年の『ウェルド』のツアーでもそうだった。
わたしが唯一、ニール・ヤングとクレイジー・ホースのライヴを見ることができた2001年のフジロックでもそうだった。