Sonic Youth – Computer Age(Neil Young)
ソニック・ユースが、ニール・ヤングの黒歴史テクノ作品を、度肝を抜くカッコ良さでカバーした逸品。
1989年に発売され、当時話題のオルタナ勢が大挙参加したトリビュート・アルバム『Bridge:Tribute to Neil Young』に収録された1曲。
原曲は、ニール・ヤングがテクノに挑戦した82年の大問題作『トランス』の中の1曲。
デジタル・ビートやシンセサイザーの導入だけならまだしも、ヴォコーダーで声まで変え、もはやニール・ヤングの面影がまったくない実験作に、昔からのファンは戸惑い、評論家は酷評し、もちろん売れ行きも悪く、移籍したばかりのレコード会社は怒り狂い、これをきっかけに80年代を迷走することになった、ニール・ヤングの黒歴史と評されるアルバムだっだ。
だから最初は、ソニック・ユースとかいう若いバンドが、ニール・ヤングの黒歴史をイジってきたのか、とわたしは思った。でも、聴いてみたら違った。その逆だった。
黒歴史と言われ、評論家に酷評された作品を、ソニック・ユースは「なにを言ってる? こんなにカッコいい曲じゃないか」とわかりやすく示して見せたのだ。
これほど真剣に楽曲に向き合い、強いリスペクトの想いが伝わってくるカバーは滅多にない。
ハードなオルタナティヴ・ロック風のアレンジは、まるでこっちが原曲のように聴こえるほどに、しっくり来ている。
このカバーによって原曲の良さが初めてわかったという人は多かったのではないか。わたしもそのひとりだ。
実はニール自身も、このトリビュート・アルバムを初めは聴きたいと思わなかった、と話している。
「若い人たちにイジられてるような気がしたからね。でも周りからあまりに薦められるから車の中で聴いてみたら、思っていたのと全然違った。ソニック・ユースは最高だし、ピクシーズやニック・ケイヴもすごくいいね」(当時の雑誌に掲載されたインタビューの記憶より)
80年代は迷走していたニール・ヤング自身もこのカバーに触発され、轟音ギター・ロックに回帰して90年代は見事に復活を果たし、〈ゴッドファーザー・オブ・グランジ〉と呼ばれ、多くの若いアーティストたちが称賛した。
ニール・ヤングの91年の《ウェルド》ツアーでは、ソニック・ユースをサポート・アクトに指名して全米ツアーを行い、サーストン・ムーアを自宅に招いたり、世代を超えた友人関係も築かれた。
カバーしたほうも、されたほうも、両方が得をした、カバー・ソングの鑑だ。
↓ こちらはニール・ヤングの原曲。